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見過ごされていたイスラム原理主義者によるテロ攻撃の兆候
サウジ軍将校に射殺された米兵の遺体(12月8日、デラウェア州) MARK MAKELA/GETTY IMAGES
<米軍基地で銃撃を行ったサウジ空軍将校、パリ警察本部内で暴れたイスラム教徒の警察職員──原理主義者によってジハードが行われる前には共通するシグナルがあった>
2019年12月、21歳のサウジアラビア空軍将校が飛行訓練を受けていたフロリダにある米軍基地で銃撃を行い、3人が死亡するという事件が発生した。将校は警察によって射殺され、FBIはテロ事件と断定した。
この事件は、10月にフランスのパリ警察本部内で発生した警察職員による襲撃事件(4人死亡)を想起させる。両事件には、容疑者が共にイスラム教徒であり、治安を守る立場にありながら、軍と警察という自らが属する組織の施設内で仲間を殺害したという共通点がある。
もう一点重要なのは、両容疑者には犯行に先立ち、さまざまな「兆候」が見られたことだ。
サウジ人将校には、2015年からアメリカに対するジハードを奨励するイスラム過激派指導者の主張をリツイートするなど、過激化の兆候が見られた。犯行前にはサウジ人学生3人を自宅に招待して夕食会を催し、イスラム過激派が大量虐殺を行うビデオを共に観賞した。事件後その3人は拘束され、1人は犯行の様子をビデオ撮影しており、あとの2人は車内でその様子を眺めていたと伝えられた。
一方パリ警察職員は、イスラム教徒女性と結婚してイスラム教に改宗した。2015年からシャルリ・エブド社襲撃などイスラム過激派によるテロ攻撃を支持する発言をするようになり、西洋的な服装をやめ、女性と目を合わせなくなり、話もしなくなった。犯行直前には、妻と「アッラーフアクバル(神は偉大なり)」「愛すべきわれらが預言者ムハンマドと『コーラン』に従え」といったメッセージを数十回にわたりやりとりしていた。所有していたUSBフラッシュメモリからは、「イスラム国」の斬首映像などが見つかった。
両者は明らかに、イデオロギー的に過激化しつつある兆候を見せていた。周囲の人々のうち、誰一人その変化に気付かなかったということはあり得ない。
実際にパリ警察職員については、女性を避けるなどの態度があまりに不審であるといった報告が上司にあったものの、具体的な対策は取られなかった。事件後フランスのカスタネール内相は、攻撃をあらかじめ防ぐことができなかった「機能不全」があったことを認めている。
サウジ人将校についてはサウジ当局者が過激化の兆候を認めつつ、「全てのテロリストは過激派だが、全ての過激派がテロを実行するとは限らない」と釈明したと、ワシントン・ポスト紙が伝えている。
発言や服装、異性への態度に変化
どこに住むイスラム教徒も、ほとんどが暴力を憎む人々であるはずだ。しかし彼らが神の言葉だと信じる『コーラン』には、異教徒を殺せと命じる明文があり、それに忠実にジハードを実行することこそが大義だと信じるイスラム原理主義者も確かに存在している。
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