香港予算案、赤字抑制へ公務員1万人削減 AIを中核産業に
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香港の陳茂波(ポール・チャン)財政官は26日、予算案を発表し、財政赤字の拡大を抑制するため、今後2027/28年度までに公的経常支出を7%削減すると表明した。資料写真、24日撮影(2025年 ロイター/Tyrone Siu)
[香港 26日 ロイター] - 香港の陳茂波(ポール・チャン)財政官は26日、予算案を発表し、財政赤字の拡大を抑制するため、2027年4月までに公務員1万人を削減することを明らかにした。
また、人工知能(AI)を大々的に推進する計画も表明。世界経済の不確実性、地政学的緊張、不動産市場の低迷による逆風を和らげる方針を示した。
財政官は「計画的かつ漸進的」に財政収支の改善を目指すとし、前年度の土地売却収入が急減しており、財政健全化の「強化」を通じて「将来の発展のための持続可能な財政基盤」を築くと述べた。
28年3月末までに公的支出を7%減らす。公務員は今後2年間、毎年全体の2%ずつを削減する。今年は公務員の給与も凍結する。
「地政学が今後も香港経済に課題をもたらすだろう」とも発言。今年の域内総生産(GDP)の予想は2─3%となっている。
米国のトランプ政権は中国・香港からの輸入品に10%の追加関税を課している。米国の関税政策で世界経済の成長が鈍れば、香港経済の新たな課題になる。
財政官はAIを中核産業に位置付けると表明。AI研究開発機関の設立に10億香港ドルを投じると述べた。「AI産業の発展を促進する国際プラットフォームとしての強みを活用する」としている。
財務官は「世界中で過去1世紀に見られなかった変化が起きる中、香港はかなり複雑な国際環境に直面している。保護主義と一方主義の台頭により、世界の政治・経済情勢は分断されている」とも発言した。
土地売却収入の急減で財政赤字は872億香港ドルと、従来予測(481億香港ドル)の2倍近くに達した。香港では住宅価格が30%近く下落。不動産デベロッパーが政府に払う土地使用料が急減し、財政を圧迫している。
政府は、オフィスの空き室率の高さや将来の潤沢な供給を踏まえ、来年度は商業用地の売却を見送る。一部の商業用地を住宅地に再区分することを検討する。
土地売却収入は以前、歳入の20%以上を占めていたが、現在では5%前後に減少している。政府の財政剰余金は6473億香港ドル。