アングル:米国債利回り上昇にブレーキ、成長懸念や利下げ観測再浮上で
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2月25日、米国債市場は足元で利回り上昇にブレーキがかかってきた。最近発表された経済指標で景気の勢いに陰りが見え、いわゆる「トランプトレード」に対する行き過ぎ感が台頭するとともに米連邦準備理事会(FRB)が年内に数回利下げするとの観測が再浮上し、一部の市場参加者が金利先高感を軌道修正したからだ。写真はFRBの外観。2022年6月、米ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Sarah Silbiger)
[ニューヨーク 25日 ロイター] - 米国債市場は足元で利回り上昇にブレーキがかかってきた。最近発表された経済指標で景気の勢いに陰りが見え、いわゆる「トランプトレード」に対する行き過ぎ感が台頭するとともに米連邦準備理事会(FRB)が年内に数回利下げするとの観測が再浮上し、一部の市場参加者が金利先高感を軌道修正したからだ。
実業家イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」による政府職員解雇は労働市場の基盤を弱め、消費に打撃を与えるとの懸念も出てきている。また、米金融大手シティグループが算出する経済サプライズ指数はマイナス圏に突入し、指標がエコノミスト予想より悪化している状況がうかがえる。
こうした中でアカデミー・セキュリティーズのマクロ戦略責任者を務めるピーター・チア氏は、10年国債利回り(米長期金利)の目標水準を従来の「4.8%ないしそれ以上」から4.6%に引き下げ、それでもまだ高過ぎるかもしれないと考え始めていると明かす。
「現段階の成長見通しは実現していない。首都ワシントンやマールアラーゴ(トランプ大統領のフロリダ州別荘)からは大量のノイズがもたらされ、何を重視するべきか判断が難しい。今は全てが人々に立ち止まったり、動くのをためらわせたりする材料になっており、それが実体経済ないし市場に波及するまで時間はかからない」と指摘した。
トランプ氏が大統領選に勝利した昨年11月時点では、経済成長加速や規制緩和、減税拡大の可能性などへの期待が高まった一方、関税発動と移民規制は物価押し上げにつながると見なされていた。
12月の指標はそうした見方を裏付ける内容で、FRBの利下げ停止観測が台頭。米国債利回りは上昇した。
そして今年1月には10年国債利回りが一時4.81%と14カ月ぶりの高水準に達する場面があった。
しかし、25日現在の利回り水準は4.31%まで下がっている。一部のアナリストはトランプ氏の財政刺激策の効果が顕現化するまでにはより長い時間が必要だと話す。DOGEの歳出削減は長期的に財政状況を改善させるかもしれないが、目先は経済に痛手を与える恐れもある。
ジャニー・モンゴメリー・スコットのチーフ債券ストラテジスト、ギー・ルバ氏は「短期的なリスクは直近4週間で大量解雇された連邦政府職員が消費支出を押し下げ、それがより重大な景気減速へと広がっていくことだ」と述べた。
一方、このところの利回り低下は、市場にとってより好ましい別の要因も寄与している。例えばベッセント財務長官が当面は長期債増発の計画がないと発言したことや、複数のFRB当局者が量的引き締め(QT)の停止ないし縮小に言及したことが挙げられる。
市場の値動きは秩序を保っており、景気後退が差し迫っていると市場参加者がパニックになっている気配は見えない。
ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ投資ストラテジスト、エミリー・ローランド氏は「米経済はゆっくり減速を続けており、利回りが急低下せず現状付近で上下する主な理由だ」と説明。その上で、トランプ政権の規制緩和や減税などの米国第一主義にいったん興奮した市場は今、そうした政策の一部がはっきりするまでまだ時間がかかることを示す材料が増えたため一種の揺り戻しに見舞われていると語った。