ニュース速報
ワールド

インド中銀が約5年ぶり利下げ、景気押上げへ0.25%引き下げ

2025年02月07日(金)19時19分

 2月7日、インド準備銀行は主要金利のレポレートを25ベーシスポイント(bp)引き下げ6.25%とした。中銀のロゴ、ムンバイで2023年撮影(2025年 ロイター/Francis Mascarenhas)

Swati Bhat Sudipto Ganguly

[ムンバイ 7日 ロイター] - インド準備銀行(中央銀行)は7日、主要金利のレポレートを25ベーシスポイント(bp)引き下げ6.25%とした。利下げは2020年5月以来で約5年ぶり。金利はこれまで11会合連続で据え置かれていたが、景気低迷に対応した。

ロイター調査でもエコノミストの7割が引き下げを予想していた。

金融政策委員会(MPC)の委員6人全員が利下げと、金融政策のスタンスを「中立」に維持することを支持した。

昨年12月に就任したマルホトラ総裁にとっては初めての政策決定会合だった。総裁は記者会見で「景気回復は見込まれるもののペースは昨年より大幅に緩やかで、インフレ動向を踏まえ金融緩和の余地が生じたと判断した」と述べた。

「われわれは現在、極めて大きな不確実性に直面しているが、政策スタンスの変更は必要としていない。従って政策スタンスは中立のままだ」と説明した。

「MPCは中立的なスタンスを維持しつつ、現段階では金融政策の引き締め度合いを緩和することが適切だと考えた」と指摘した。「引き締め度合いの緩和は今回のMPCのみが対象で、今後の会合を含まない」とも述べた。

DBS銀行のシニアエコノミスト、ラディカ・ラオ氏は「MPCは『中立』スタンスを維持することで、あからさまなハト派的なシグナルを控えた」と分析した。

タタ・アセット・マネジメントの債券部門責任者ムルティ・ナガラジャン氏は、4月の利下げは既定路線ではなく経済状況次第との見方を示した。

会合前にロイターが調査したエコノミストの大半は、7日の利下げと、4月に追加で25bpの利下げを実施し、政策金利を6%にすると予想していた。しかし、キャピタル・エコノミクスや野村などは、さらに数回の利下げが行われ、政策金利は75─100bp低下すると予想している。

中銀の発表後、10年物インド国債利回りは6bp上昇の6.71%となった。利下げがすでに織り込まれていたことや、中銀が流動性の逼迫を緩和する措置を見送ったことが金利上昇の要因とみられる。通貨ルピーと主要株価指数は小動きだった。

<成長鈍化、インフレ緩和>

政府は3月までの今年度の成長率を6.4%と予想しているが、製造業の弱さと企業投資の減速で当初予想の下限を下回っている。来年度の成長率は6.3─6.8%と見込まれている。

中銀は来年度の成長率を6.7%と予想した。マルホトラ総裁は雇用情勢の改善、このほど発表された減税、インフレの緩和、モンスーン(雨季)明けの好調な農業生産が成長を支援するとの見方を示した。

「インドは7%以上の成長を達成できる。われわれはそれを目指すべきだ」と語った。

物価上昇率は依然として中期目標の4%を上回っているものの、12月には4カ月ぶり低水準の5.22%に低下。今後数カ月で目標に向け徐々に低下する見通しで、政策対応の余地が広がっているとみられている。

中銀は今年度のインフレ率が平均4.8%になり、来年度は4.2%に低下すると予想した。

マルホトラ総裁は食品価格の上昇圧力が和らぐ見込みとした一方、エネルギー価格の変動がインフレ見通しのリスクだと指摘した。

コアインフレ率は上昇する可能性があるものの、緩やかな水準にとどまると予想した。政府が先週の予算で発表した減税がインフレにつながる公算は小さいとの認識を示した。

マルホトラ総裁の就任以降、ルピーが下落しボラティリティーが上昇しており、市場では中銀が為替相場の管理を緩めているのではないかとの観測が広がっている。

ダス前総裁時代は中銀が大規模な為替介入を実施した結果、ルピーのボラティリティーは数十年ぶりの低水準にまで低下していた。

マルホトラ総裁は、市場介入は特定の水準を目指すのではなく、「過度で破壊的な変動」を和らげることが目的との従来の立場を改めて表明した。「ルピーの為替レートは市場の力によって決定される」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

春闘満額回答相次ぐ、トヨタ5年連続 全体の賃上げ率

ビジネス

トヨタの25年春闘、5年連続で満額回答 賃金・賞与

ビジネス

トヨタ・日立など満額回答、日産は要求下回る=25年

ワールド

米政権、司法省の公職汚職捜査部門で大幅な人員削減検
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    スイスで「駅弁」が完売! 欧州で日常になった日本食、…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    トランプ=マスク独裁は許さない── 米政界左派の重鎮…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中