ニュース速報
ビジネス

トランプ氏が対中追加関税警告、EUは報復措置提案 市場の動揺続く

2025年04月08日(火)08時13分

トランプ米大統領の相互関税を受けた世界的な貿易戦争が4月7日、一段と激化した。6日、メリーランド州のアンドリュース空軍基地で撮影(2025年 ロイター/Kent Nishimura)

Steve Holland Doina Chiacu Julia Payne

[ワシントン/ブリュッセル 7日 ロイター] - トランプ米大統領の相互関税を受けた世界的な貿易戦争が7日、一段と激化した。トランプ氏は中国への関税をさらに引き上げると警告。欧州連合(EU)は独自の対抗措置を提案した。

トランプ氏が2日に貿易相手国に対する包括的な関税措置を発表して以降、リセッション(景気後退)懸念が高まり、世界の金融市場に動揺が広がっている。

トランプ氏は、中国が対米報復関税を撤回しなければ、9日から中国に対し50%の追加関税を課すと表明した。

中国は先週、米国の相互関税への対抗措置として10日から全ての米国製品に34%の追加関税を課すと発表していた。

トランプ氏は7日、相互関税が数十年にわたる貿易自由化で衰退した産業基盤を取り戻すのに役立つだろうと指摘。

ホワイトハウスで記者団に対し、「これはわが国が状況を一新できる唯一のチャンスだ。なぜなら、私がやっているようなことをする、あるいはそれを経験する意欲のある大統領は他にいないからだ」と語った。

一方、EUの執行機関である欧州委員会は7日、トランプ氏による鉄鋼・アルミニウムへの関税に対抗するため、一連の米国製品に25%の対抗関税を課すことを提案した。ロイターが入手した文書によると、対象品目はダイヤモンド、卵、デンタルフロス、ソーセージ、鶏肉など多岐にわたる。

ただ、当局者らは交渉による解決も模索している。欧州委のフォンデアライエン委員長は、ブリュッセルでの記者会見で、EUは工業製品について双方が関税をゼロにする「ゼロ対ゼロ」の関税協定を交渉する用意があると表明。

同委員会のシェフチョビッチ委員(通商担当)は「遅かれ早かれ、われわれは米国と交渉のテーブルに着き、双方が受け入れ可能な妥協点を見いだすだろう」との見解を示した。

トランプ氏はアジアの緊密な同盟国である日本との通商交渉を開始するとし、ベッセント財務長官とグリア通商代表部(USTR)代表を同国との交渉責任者に任命した。

相互関税のうち、米国への全ての輸入品に一律10%の基本関税を課す措置は5日に発効。9日には各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする措置も発効し、57カ国・地域が対象となる。

米当局者によると、9日の上乗せ分発動を回避するため、数十カ国が政権に接触している。

この日の米国株式市場は値動きの荒い展開となった。トランプ氏が中国を除く全ての国に対する関税の90日間停止を検討しているとの報道を受けて上昇する場面があったが、その後、ホワイトハウスが報道を否定したことを受けて再び下げに転じた。

米国家経済会議(NEC)のハセット委員長は、トランプ氏が打ち出した相互関税を巡る経済的な懸念を打ち消し、各国が米国にとって有意義な提案をすれば大統領は耳を傾けるだろうと述べた。

ハセット氏はFOXニュースで「大統領は自身で効果があると分かっている取り組みを強化しており、その行動を続ける。だがわれわれの貿易相手の言い分には聞く耳を持つ。彼らが米国の製造業と農家に有益な取引を持ちかければ、きっと大統領は聞いてくれる」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国BYD、欧州で高級ブランド「デンザ」お披露目 

ワールド

米最高裁、敵性外国人法に基づく強制送還を制限付きで

ワールド

豪消費者信頼感、4月は大幅低下 米関税巡る市場混乱

ワールド

ライト米エネルギー長官が中東訪問へ、サウジなど約2
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 7
    フジテレビが中居正広に対し損害賠償を請求すべき理由
  • 8
    反トランプのうねり、どこまで大きくなればアメリカ…
  • 9
    流石にこれは「非常識」?...夜間フライト中に乗客が…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 7
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 8
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 9
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中