ニュース速報
ビジネス

米国債四半期入札は規模据え置きか、大統領選後に変更も

2024年07月29日(月)14時28分

 7月26日、米財務省は29、31の両日に発表する利付き国債の四半期定例入札で大半の規模を前回水準に据え置く見通しだ。2020年8月撮影(2024年 ロイター/Andrew Kelly)

Karen Brettell

[26日 ロイター] - 米財務省は29、31の両日に発表する利付き国債の四半期定例入札で大半の規模を前回水準に据え置く見通しだ。昨年に大幅増額しただけに市場にひとまず買い安心感をもたらしそうだが、米財政は悪化が続いており、今後は一段と発行が増える恐れがある。

財務省は大まかな資金調達見通しを29日、詳細を31日にそれぞれ発表する予定だ。

財務省は昨年8月以降、歳入減少や金利上昇などによる財政赤字の拡大を受けて、入札規模を拡大した。例えば、昨年半ばに420億ドルだった2年債は690億ドル、10年債は350億ドルから420億ドルにそれぞれ増やした。

ただ、財務省は今年5月、少なくとも今後数四半期は大半の入札で規模を拡大しないと発表しており、アナリストらは来年5月まで十分な財政資金を確保できるはずだと指摘している。11月の米大統領選の先行き不透明感も、当面は大規模な増発を見送る一因になっているようだ。

米大手銀行ウェルズ・ファーゴ(Wファーゴ)のマクロストラテジスト、アンジェロ・マノラトス氏は「今回の借り換え債入札発表における最大のリスクは、当局の方針説明の文言が大幅に変わって、その中で表面利率の引き上げ時期が市場予想よりも早いと示唆する可能性があることだ」と述べた。

入札規模が拡大する可能性があるのは5年物インフレ連動債(TIPS)だが、これは例外でしかも小幅増発にとどまりそうだ。

大統領選後の米国債全体の入札規模見通しについてFHNフィナンシャルのマクロストラテジスト、ウィル・コンパーノル氏は「大統領選後に見直しが行われ、今後12─24カ月の見通しが一段と明確になった後に」規模が一段と拡大する可能性が高いとの見方を示した。

また、市場参加者は、財務省短期証券(Tビル)の発行規模に関して財務省の言及があれば何であれ注視しそうだ。ここ数四半期で発行が増加しているためで、現在、市場で流通する米国債全体の約21%を占め、財務省借入諮問委員会(TBAC)が推奨する15─20%の範囲を超えている。

イールドカーブで見てもTビルは利回りが長期金利よりも高い。逆イールドを巡っては上院で6月、共和党の複数議員から、大統領選を控えた景気刺激を念頭に長期債よりもTビルの発行を増やしているとの見方が相次いだものの、イエレン財務長官は発行計画の正当性を主張した。

資産運用会社ハドソン・ベイ・キャピタルも最近のリポートで、財務省にはそうした狙いがうかがえると指摘した。しかし、イエレン長官は26日、ロイターに否定見解を表明し、長期債務ではなく短期証券の発行を増やすことで経済を刺激する戦略は「100%存在しないと断言できる」と述べ、発行計画は規則的で予測可能な方法に則っていると強調した。

市場でも財務省方針と同じ考えをする機関投資家もおり、ジェフリーズの米国シニアエコノミスト、トーマス・シモンズ氏は、Tビル需要は強く増発は理にかなっており、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ後は「財務省が長期債を大量発行していれば間違いだったと指摘できるだろう」と話した。

また、長期債の既発債の流動性下支えを主な目的に5月に始めた買入消却を巡っては規模拡大の可能性がある。さらに、納税集中日のころの政府資金管理を目的に主にTビル買入消却を導入する可能性もある。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏「大型艦の保有近い」 海軍力強化の重要性強

ワールド

ベネズエラ野党候補、スペインに出国 扇動容疑で逮捕

ワールド

フランス全土でデモ、マクロン氏の首相選出に抗議

ビジネス

景気懸念再燃、ボラティリティー上昇も=今週の米株式
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が増加する」農水省とJAの利益優先で国民は置き去りに
  • 3
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元で7ゴール見られてお得」日本に大敗した中国ファンの本音は...
  • 4
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 5
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 8
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 9
    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…
  • 10
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 1
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つの共通点
  • 4
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 5
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 6
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 7
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 8
    再結成オアシスのリアムが反論!「その態度最悪」「…
  • 9
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中