トランプ「勝利」の先に待つ破滅

ニューヨークの裁判所で罪状認否に臨んだトランプ(4月4日) ANDREW KELLYーREUTERS
<トランプが再び共和党の大統領候補者指名を獲得する可能性が高まったが、あらゆる選挙で民主党が共和党を破る可能性も高まった>
アメリカ国民は、この粗野な男の顔を見続けることになりそうだ。元ポルノ女優に不倫の口止め料を支払ったとされる問題でドナルド・トランプ前大統領が起訴されたことにより、2024年の大統領選までアメリカの政治と社会、そして共和党がトランプの怒りの渦にのみ込まれることが確実になった。
トランプの数々の精神的な病理の中で最も根深いものは、「負け犬」と呼ばれることへの恐怖だろう。しかし、皮肉なことに、今回の起訴により、トランプが24年の大統領選で共和党の候補者指名を獲得できる可能性が高まった半面、トランプと共和党が大統領選やその他の選挙で厳しい戦いを強いられる可能性も高まった。その大きな要因は、以下の4つだ。
■共和党の支持層 あらゆる選挙で共和党の候補者選びのプロセスを大きく左右する中核的な支持層は、白人至上主義的で反動的な思想を持った極右の人々だ。そのため、大統領選の予備選ではトランプが党内の全ての対抗馬を退けるだろう。
こうした状況の下、共和党の政治家たちは、党の中核的な支持層の思想──多様性の尊重や、性に関する社会規範の変化、政府の役割の拡大、国際協調主義などへの憎悪と敵意──を受け入れざるを得ない。しかし、このような思想を持つ人たちはアメリカ社会全体の30%程度にすぎない。
■トランプの起訴 多くの共和党支持者に言わせれば、トランプの起訴は、文化的エリート層と非白人たちが伝統的な白人文化を取り除こうとしている「証拠」だという。セクシュアリティーや結婚の在り方、個人の自由、白人の優越性などに関する伝統的な考え方を排除し、「意識高い系」の社会を築こうとしている、というわけだ。
こうした思いを背景に、いま共和党支持者の間でトランプの支持率が再び上昇している。共和党から選挙に出馬しようとする政治家は、共和党支持層の怒りの感情を無視できない。ただ、そのような有権者は社会全体では決して多数派ではない。
■銃規制 4月6日、共和党主導のテネシー州議会は、民主党の2人の黒人議員を州議会から除名した。銃規制強化を求めて州議会議事堂に押しかけたデモ隊に同調して議会に混乱を招いたというのが理由だが、これにより、銃規制反対派は人種差別主義者だという印象が生まれてしまった。
その数日前、24年大統領選への出馬が取り沙汰されるフロリダ州のデサンティス知事(共和党)は、合法的に銃を所持できる人なら誰もが許可なしにどこででも(学校や裁判所でも)銃を隠し持つことを可能にする州法に署名した。しかし、米国民の大多数は、銃規制の強化を支持している。
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