「プーチンとの友情」を大急ぎで隠したルペン、「移民排斥」でマクロンに勝てるか?
選挙戦終盤でルペン(右ポスター)はマクロンを激しく追い上げた GONZALO FUENTESーREUTERS
<フランス大統領選は、現職のマクロンと極右ルペンが4月24日の決選投票に進んだ。ロシアのウクライナ侵攻はマクロンを後押しすると見られるが>
4月10日に行われるフランス大統領選挙の第1回投票では、反NATOの極左候補ジャンリュック・メランションから反移民の極右エリック・ゼムールまで、12人がしのぎを削る。
おそらくどの候補も過半数を獲得できず、4月24日に上位2人による決選投票が行われる。その顔合わせは、直近の世論調査で支持率27%で首位に立つ中道派の現職エマニュエル・マクロン大統領と、極右勢力を代表するマリーヌ・ルペン(同22%)という2017年の再現になることがほぼ確実視されている(編集部注:10日の投票の結果、首位マクロンと2位のルペンが決選投票に進むことが決まった)。
選挙の主要な争点は3つ。戦争、文化的アイデンティティー、労働者階級の不安と怒りだ。
ロシアのウクライナ侵攻は、安全保障問題をめぐる論争を一変させた。危機が国民をリーダーの下に結集させる効果は、マクロンを強力に後押しするはずだ。
マクロン陣営は、当初はロシアの侵攻を止めようとする大統領の努力に焦点を当て、開戦後はNATO諸国との協力を強調してきた。一方、長年ロシアのプーチン大統領にすり寄り、NATOを軽視してきたルペンは苦しい立場に追い込まれた。大急ぎで独裁者プーチンとの友情をうたった120万部の選挙パンフレットを破棄しその指導力を称賛した過去を封印しようとしている。
だが今回の選挙では、ウクライナ戦争以上に2つの国内問題が重要なカギを握る。
「移民の国フランスはもう終わりだ」
まず、フランスの「アイデンティティー」喪失問題。移民、イスラム、文化の衝突と不安がフランスにもたらす苦悩を私が初めて意識したのは、アルプスの麓の大学都市グルノーブルに住んでいた1976年秋のことだった。
夜遅く、寂れた街の中心部を歩いて帰宅する途中で見掛けたのは、アルジェリアやモロッコから来た寂しそうな男たち。彼らは戦後フランスの復興景気の中で工場に雇われた労働者だ。行き場もなく、家族もなく、社会から疎外された彼らは、迷子のように道をさまよっていた。
フランスでは現在、人口の10%近くがイスラム教徒だ。ルペン(と父親のジャンマリ・ルペン)やゼムールのような極右政治家は数十年前から、フランスのアイデンティティーに対する移民の危険性を説き、イスラム系移民への反対を訴えてきた。
ルペンは「移民の国フランスはもう終わりだ」と宣言。フランスは「多文化主義のベールの下に」埋もれてはならないと主張した。イスラム系女性のベール着用問題と、多文化主義が社会を腐敗させるという右派の見方を結び付けた挑発的な言辞だ。
ゼムールはさらに過激で、「大置換」と呼ばれる陰謀論を支持している。近い将来イスラム教徒がフランスの白人カトリック教徒に取って代わるという主張だ。
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