標的はバルト3国、「ユーラシア主義」から見えるプーチンの次の一手
2月24日にテレビ演説を行うプーチン REUTERS TV
<プーチンを場当たり主義者と見なしてはならない。その世界観、信奉する反欧米的哲学、戦略的アプローチ......。バルト3国で緊張が高まれば、NATOとの間で第3次大戦が始まる危険性が高まる>
気の毒なウクライナ。この国は、地理的条件とプーチンの世界観によって悲劇を運命付けられていた。
互いに対立する超大国の勢力圏に挟まれた国々は、その目的やパワーバランスの変化に翻弄され、常に不安定な存在であり続ける。
世界第2の軍事力を持つロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、自国の国境に迫るNATOの拡大を存立の危機と見なした。ウクライナの西側陣営入りを断固阻止する決意を固め、ウクライナ侵攻は許容範囲内のコストで実行可能と判断した。
ウクライナにとってロシアは強大すぎる相手だ。アメリカとNATOはウクライナのために戦うことはないと明言している。
多くの命が失われた後、ウクライナは全体主義国家ロシアの傀儡政権に戻るか、ロシアが支配する東半分と政治的に中立の西半分に分割される可能性が高い。
ウクライナの人々は40年前のアフガニスタンのように武装闘争を続け、最終的にはロシアを打ち負かすと主張する。だがヨーロッパの心臓部でゲリラ戦を展開するのは現実的ではなく、人的被害も膨大なものになる。
ロシア対NATOの大陸にまたがる大戦に火を付けるリスクもある。
ロシアの侵攻は憂慮すべき蛮行だが、ウクライナの悲劇は副次的な問題にすぎない。より大きな問題は、プーチンの世界観と国際政治への戦略的アプローチ、そして近い将来の狙いだ。
次の出方によっては、1945年にアメリカが打ち立て、1991年のソ連崩壊後も続いてきたルールに基づく国際秩序をさらに弱体化させ、破壊しかねない。
プーチンは欧米との「文明の衝突」を1つのパイを取り合うゼロサムゲームと捉えている。
過去20年間、中央ヨーロッパにおけるロシアの優位と世界的影響力の再構築を追求し、ソ連の崩壊を「20世紀最大の惨事」と繰り返し呼んだ(2つの世界大戦よりひどいという意味だ)。
プーチンが一貫して目指してきたのは、世界3大強国の1つにふさわしい地位をロシアが回復すること。従ってウクライナ侵攻は、欧米のロシア支配を防ぎ、ロシアの力と偉大さを回復するために必要な義務的措置なのだ。
「選択の余地はなかった」と、プーチンは語っている。
「ユーラシア主義」の信奉者
ウクライナ侵攻で欧米からどんな制裁を受けようと、次は旧ソ連圏でNATO加盟済みのバルト3国(リトアニア、エストニア、ラトビア)を徐々に不安定化しようとするだろう。NATOの集団的自衛権を定めた北大西洋条約の第5条に、ある締約国に対する武力攻撃は全締約国に対する攻撃と見なすと定められていることなどお構いなしだ。
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