標的はバルト3国、「ユーラシア主義」から見えるプーチンの次の一手
二極化の時代が戻ってきた
一方、自国の近隣地域での覇権を取り戻し、NATOを西方に押し戻したいというプーチンの戦略上の目標はあくまでも変わらない。
しかし、今回のウクライナ侵攻は、その点では逆効果になりつつある。ウクライナはロシアの支配下に入るかもしれないが、NATOはこれを機に存在意義を再確認し、東欧諸国(ポーランド、バルト3国、ルーマニア)における兵力を増強させている。
それでも、プーチンは今後、バルト3国への圧力を強めるかもしれない。
ロシアの飛び地領であるカリーニングラード(ポーランドとリトアニアに挟まれている)の脆弱性をアピールしたり、これらの諸国が国内のロシア系住民を不当に扱っていると非難したりして、秘密工作によりこれらの国々の不安定化を図る可能性はある。
1930年代のナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーさながらの主張だ。
しかし、もしプーチンがバルト3国で緊張を高めれば、ロシアとNATOの間の戦争が――第3次大戦が――始まる危険性が今以上に高まる。
ジョー・バイデン米大統領とNATOの指導者たちは、NATO加盟国であるバルト3国を守るために戦うことを明言している。
この先の展開は、プーチン自身も見通せていないだろう。
少なくともはっきりしているのは、プーチンと欧米の世界観や戦略目標が相いれないものだということだ。ヨーロッパが大規模な戦争の戦場になるリスクは、1945年に第2次大戦が終わって以降で最も高くなっている。
プーチンのウクライナ侵攻により、1991年のソ連崩壊後に形づくられた国際秩序は崩れ去った。
世界は、再び20世紀後半の冷戦期のような二極化の時代に戻ろうとしている。2つの勢力が互いの主張を拒絶もしくは誤解する世界で、私たちはまた生きることになるのだ。
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