エセ科学を信じるジョコビッチの無責任

ジョコビッチはコロナに関してルール無視の行動を繰り返してきた Diego Fedele-AAP IMAGE-REUTERS
<厳格な水際対策を取るオーストラリアのルールに従えないのなら、追い出されて当然>
男子テニスの世界ランキングで頂点に立つノバク・ジョコビッチがオーストラリアに到着したのは、1月5日のこと。17日に始まる全豪オープンで史上単独最多の21回目の4大大会制覇が懸かっていた。
しかし、オーストラリアの法律では、入国者に対して事前に新型コロナウイルスのワクチン接種を受けることを求めている。ワクチン未接種のジョコビッチは、空港で身柄を拘束された。10日には裁判所が政府の入国拒否の決定を覆す判断を下し、ジョコビッチはひとまず解放されたが、政府が再びビザを取り消し、強制送還を行う可能性がある。(編集部注:ジョコビッチは14日、豪政府によって再度ビザを取り消され、翌日身柄を拘束された)
一方、この問題をめぐり、ジョコビッチの祖国セルビアとオーストラリアの関係に緊張が走っている。世界の複数の都市では、ジョコビッチを支持する人たち(主にセルビア人)によるデモも行われている。
しかし、オーストラリア政府が取るべき措置は明白だ。次の飛行機でジョコビッチを追い返せばいい。
ワクチン接種を政治問題化
新型コロナ危機は、世界のポピュリスト(大衆主義者)、リバタリアン(自由意思論者)、さらにはファシストたちにより政治問題として利用されてきた。反ワクチン派は、理にかなった感染対策を「自由の侵害」と批判し、政府の対策の足を引っ張っている。それにより、世界中で多くの人が命を落としてきた。適切な対策が行われていれば、その死は避けられたはずだった。
ジョコビッチは史上最高のテニス選手だし、人間としても立派な行動を取ってきた。コロナ禍で経済的に苦しむランキング下位の選手たちを支援するための基金の設立を呼び掛けたり、恵まれない子供たちを支援する財団に寄付したりしている。しかし、新型コロナに関する公衆衛生上のルールが自分には適用されないと思っているかのような行動を繰り返してきたことも事実だ。