79歳バイデン大統領、再出馬を「リーク」して目的を達成した
次期大統領の任期が終わる2028年、バイデンは87歳だが…… AP/AFLO
<2024年に再選を目指す意向を献金者に伝えると、すぐさまメディアに広まった。間違いなく意図的なリークだが、何が目的だったのか>
バイデン米大統領は11月20日までに、少人数の献金者に2024年の大統領選で再選を目指す意向を伝えたという。
この発言は瞬時に(そして間違いなく意図的に)報道機関にリークされ、すぐさまバイデンの狙いをめぐり臆測が飛び交った。
バイデンが少なくとも1つ目の目的を達成したのは明らかだ。
再出馬の意向や再選の可能性について、反対派や潜在的ライバルに世論形成の主導権を渡さず、2024年の選挙についての議論をリードするという狙いだ。
また、支持率の低下に見舞われている今の時期に少なくとも一時的に政治的影響力を高めることにも成功した。
再出馬の可能性は確かにあるが、その狙いは2024年に向けた意思表明というより、目の前の政治課題への対処にあった。
「本物の再出馬宣言」であれば他の政治家と同様、少数の献金者との「バーチャルミーティング」ではなく、インパクトを最大化するために派手な舞台を選ぶはずだ。
そもそも、なぜ今なのか。
2020年の大統領選挙中バイデンは自らを次世代の民主党リーダーのための「懸け橋」となる候補と位置付けた。そのため大統領に当選したとしても、1期限りで終わるのではないかという臆測が広がった。
その点で再出馬をにおわせる今回の発言は、バイデンの心変わりを示唆しているように見える。
しかし、「懸け橋」発言は選挙戦で有権者に受け入れてもらい、ライバルの警戒心を解くための戦術だ。
過去40年間の政治闘争で傷つき、年老いた候補者ではなく、アメリカに未来をもたらせる候補者だとアピールするためのものだった。
つまり「懸け橋」発言は本気であれ方便であれ、抜け目ない政治的な一手だった。
再出馬の意向を献金者に伝えたのも同様の戦術だ。
大統領選勝利から1年間で支持率は41%まで低下した(トランプ前大統領の同時期の支持率は35%)。しかも、10月の消費者物価指数は前年同月比で6.2%上昇と31年ぶりの高い伸びを記録した。
物価上昇はほとんどの経済・政治問題以上に有権者のストレスとなり、大統領に非難が集中する。今の国民の大半が2%以上のインフレを経験していないとすれば、なおさらだ。
特に自動車大国アメリカはガソリン価格に敏感だが、バイデンの当選後62%も上昇している。
ほとんどのアメリカ人は国内の政治的分断や党派対立、民主党の内紛に深い懸念を抱き、課題に対処できないように見える政府に怒りを感じている。
さらにサプライチェーンの混乱が経済の足を引っ張っている。
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