コラム

人種差別主義者と極右の政党として、トランプと共に沈みゆく共和党

2021年02月27日(土)13時10分

熱烈なトランプ支持者は健在だが、米社会では少数派にすぎない JOE RAEDLE/GETTY IMAGES

<弾劾裁判で議事堂襲撃に関するトランプの責任は厳しく糾弾されたが、それでも共和党支持者のトランプ支持は強くなっている>

2月13日、1カ月余り前に起きた連邦議会議事堂襲撃事件で割られた窓がまだそのままの上院本会議場で、この事件をめぐるドナルド・トランプ前大統領の弾劾裁判の評決が行われた。予想されていたとおり、賛成票は3分の2に届かず、無罪評決が下された。

それでも、この弾劾裁判により、トランプはアメリカの民主政治に対する脅威として歴史的汚名を着ることになった。2度も弾劾訴追された大統領は過去に例がない。しかも、トランプの与党だった共和党から7人の上院議員が有罪に賛成した。

民主党にとって弾劾裁判の最大の目的は民主政治の原則を取り戻すことだったが、ほかに政治的動機もあった。弾劾裁判には、共和党が「民主政治を破壊しかけた」というイメージを植え付け、共和党に厳しい選択を迫る意味もあったのだ。

共和党は、大半の有権者からファシスト的・人種差別的・排外主義的な政党と見なされることを選ぶのか。それとも、民主政治の規範を再び受け入れて、穏健な中道右派の有権者の支持を得ようとするのか。

現時点での共和党支持者の反応は、(意外ではないが)気掛かりなものだ。弾劾裁判を機に、共和党支持者のトランプ支持は強まっている。

共和党が直面するジレンマ

トランプが共和党で重要な役割を担い続けることを期待する共和党支持者の割合は、連邦議会議事堂襲撃事件が起きた直後には41%だったが、弾劾裁判終了後には59%に増えている。しかも、共和党支持者の81%は、今もトランプに好ましい評価を抱いているという。

共和党有力者の間には、党の主導権をトランプから奪い返そうという動きもある。ミッチ・マコネル共和党上院院内総務は、弾劾裁判では無罪に投票したが、その直後には、議事堂襲撃事件に関してトランプの責任を厳しく指摘した。

それでも、トランプ的な思考は共和党を支配し続けている。弾劾裁判終了後、ワイオミング州、ペンシルベニア州、ノースカロライナ州、ルイジアナ州などの共和党指導部は、弾劾に賛成した地元選出議員を非難した。

また、上院議員のテッド・クルーズ、トム・コットン、ジョシュ・ホーリーは、トランプ支持者に迎合して、共和党のリーダーに上り詰めようとしている。

いま共和党は深刻なジレンマに直面している。現在の共和党の支持基盤は人種差別主義者と極右の有権者だが、この層を代弁する主張を展開すれば、長期にわたり選挙で負け続ける可能性が高いのだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story