鉄の女サッチャーとは程遠い、氷の首相メイの罪と罰

EU離脱に突き進むメイの冷静さはイギリスの現状にそぐわない Jonathan Brady-Pool/REUTERS
<ブレグジットを漂流させた最大の戦犯はテリーザ・メイ――今からでも「残留」に舵を切るべきだ>
本人は嫌がっているが、テリーザ・メイ英首相は「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャー元首相とよく比較される。
女性でイギリスの首相になったのはこの2人だけだ。いずれも保守党の党首だが、野党からも変革と近代化の担い手と目されていて、共にオックスフォード大学の出身。移行期間もEUとの合意もない「ハードブレグジット」の可能性が高まるなか、メイが驚異の粘り腰を見せているのも、たぶんサッチャー並みに鉄壁の頑固さを持ち合わせているからだろう。
しかし2人には違いもある。サッチャーが強いイギリスの復活について明確なビジョンと目標を持ち、鉄のように固い決意で突き進んだのに対し、メイは政治家の役割を「何かをすることであり、何者かであることではない」と考える。だが16世紀フランスの哲学者モンテーニュの言葉を借りるなら、かつて世界の海を制した偉大な国の指導者たる者は、「行く先の定まらぬ船にはどんな風も役に立たぬ」ことを知るべきだ。
ところが今はメイ政権の閣僚でさえ、首相自身がどこに行き先を定めているのか分からずにいる。だから国民は互いに矛盾する幾多の願望(主権の回復、国境の開放、入国管理の強化、自由貿易、移民の排除、大国の地位、等々)が渦巻く海を漂うのみで、イギリスという船は困窮と影響力の低下へとまっしぐらに進んでいる。
歴史を振り返れば、回避できるのに自滅の道を選んだ国は皆無に等しい。稀有な例は、例えば1861年のアメリカだろう。当時の大統領は、国が2つに引き裂かれていくのを手をこまねいて見つめるのみで、流れを変えるための行動を起こさなかった。結果としてこの年に南北戦争が起こり、国は分断された。
「民意」に引きずられるな
メイも確かに国を導こうと努めた(ただし不合理な民意にクギを刺すことはなかった)が、EU離脱が現実になればイギリスは空中分解しかねない。スコットランドやウェールズ、さらには北アイルランドがEU残留を望み、連合王国を去る可能性がある。いずれにせよ、時間がない。このまま期限が過ぎて合意なき離脱となれば、この国の影響力は低下し、国民は貧しくなる。代わりに得られるものは......偽りのプライドのみだ。
16年の国民投票では、確かに国民の52%がEU離脱を選んだ。しかし国民の大半は、どんな離脱のシナリオでも避け難い経済成長の鈍化を望んでいない(あるいは「避け難い」という事実から目を背けている)。それでもメイは民主主義の原則に忠実で、国民投票で民意が示された以上、その意思に従うべきであり、そうでなければ民主主義が失われると考えている。
国民投票の段階で、メイはEU離脱に反対していた。しかし国民投票で離脱派が勝ち、その20日後に首相に推されてからの彼女は一貫して「ソフトブレグジット」なるものを目指してきた。EU市場との良好な関係を維持し、EUの定めた各種規制もある程度は受け入れるという立場だ。そしてどうにか政権を維持してきた。
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