コラム

トランプ「機密メモ」が民主主義をつぶす

2018年02月17日(土)12時00分

CIAや政府機関の上層部で働いた経験から言えば、秘密結社やディープステートなど存在しない。だが、たとえデマでも、そうした考えは民主主義の信用を傷つけ、多くのトランプ支持者はそうしたデマを信じている。

政治闘争とディープステートによる不正というばかげた主張の裏で、ヌネス・メモはアメリカの政府と社会に3つの害を及ぼしている。

まずロシア疑惑捜査の信用を低下させてトランプを守る。次に(FBI内部で不正と「反乱」活動が行われているという)かつてない大げさな逆襲によって、捜査とロシア疑惑から世間の目をそらす。さらに、政府の民主主義制度に対する不信感をあおり、「指導者」つまりトランプが民主主義的規範に縛られないようにする。

「大統領権限は疑いようのないもの」だとトランプの側近の1人はかつて語った。トランプを脅かす面倒な民主主義のプロセスと疑いをつぶす。それがヌネス・メモの狙いだ。

<本誌2018年2月20日号掲載>

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グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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