コラム

Qアノンとは違う「日本型陰謀論」が保守派の間で蠢いている

2021年02月19日(金)18時35分

いわく沖縄における在日米軍基地辺野古移設反対派には、中国や韓国からの政治的工作員が入り込んでおり、日当が支払われているという完全なデマである。

要するに中国共産党が沖縄を軍事占領するために、その尖兵として県内に工作員を潜伏させているという妄想であるが、具体的に沖縄のどの自治体に工作員が潜伏しているのか物証が示されたことはない。

また、保守派のDHCシアター(当時)制作の番組である『ニュース女子』が2017年、こういった陰謀論に基づく内容を主に東京MXテレビで放送したが、放送倫理・番組向上機構(BPO)から「重大な放送倫理違反」と指摘され、同番組はMXテレビから事実上追放されて現在に至る。

このように日本型陰謀論は、Qアノンとは異なり、宗教的陰謀論を排した垂直的な民族差別や、単純なイデオロギー攻撃(反左翼、反リベラル系新聞、反中韓など)の側面が強い。

よって、バイデン政権が発足してもなお、地下茎のように影響力を保つであろう米国のQアノンが、日本の保守派にその触手を伸ばす余地はあまりないと評価する。

が、在日コリアン、韓国、中国、左翼(パヨク)への呪詛を主軸とした日本型陰謀論が現在、微妙に変化の兆しを見せているのも事実であり、見逃せない。

それは、前述した「日本には八百万の神がいる」というある種の土着的観念を元にした国家神道的価値観への傾斜であり、『古事記』に代表される日本の神話・伝説を「正史」と見なす風潮の増大である。

ここにはシャーマニズムを引用した精霊崇拝が織り込まれており、そこに強引浮薄に古代天皇制の故事(仁徳天皇が民のために徴税を禁じたという「民のかまど」など)を接続させたフィクションにすぎない神話を正史と見なす価値観が勃興しつつある。

ポピュリズムのスマートな顔

歴史学者の中島岳志氏も指摘しているが、安倍前首相とは「真反対」の政治姿勢とされた昭恵夫人は、有機農業や土づくりにこだわり、無農薬で育った産品を供する小料理屋「UZU」の経営に専心している。

日本古来の伝統的で、外来種の入っていない「純血」の種苗や農作物への過度な信仰は、これまた日本農業や神道行事の付随物とされる大麻への関心に夫人を向かわせしめた。

この思想を延長すると、かつてナチスドイツが目指した純血主義につながる危険性をはらんでいる。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ハイテク・小売株が大幅安、トランプ関税でコスト増

ビジネス

金融大手、米景気後退リスクの高まりに警鐘 トランプ

ビジネス

米新規失業保険申請6000件減、労働市場の安定継続

ビジネス

NY外為市場・午前=ドル/円6カ月ぶり安値、関税措
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story