コラム

Qアノンとは違う「日本型陰謀論」が保守派の間で蠢いている

2021年02月19日(金)18時35分

あまり知られていないが、ナチスは「アーリア人的純血と土」を至高のものとしたため、ドイツ固有の無農薬・有機農業を推進し、禁煙・禁酒といった健康活動や森林浴を励行した。これは突き詰めると異物の排除であり、正義の追求と悪の排斥という二項対立の陰謀論に発展する。

こうして考えると、昭恵夫人の自然崇拝や大麻への関心は、安倍前首相とは「真反対」の政治姿勢などではなく、極右的陰謀史観の萌芽ではないだろうか。そしてそれは一見して「健康」「無農薬」というスマートなオブラートに包まれている。

ポピュリズムは、発生当時、極めてスマートな顔をしている。ナチスは初め、人種的な優劣を説く優生主義やユダヤ人排斥よりも、当時のドイツ・ヴァイマル共和制と共産主義者への攻撃に力点を置いた。そして1933年のヒトラー政権発足時には、穏健な中道保守「中央党」を取り込んだ。しかしやがて全権をヒトラーが掌握した。

ポピュリズムが進展する過程では、必ず中道的で穏健な運動を巻き込み、スマートを装って発展する。思い出してほしい。米共和党の草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」も巻き込まれ、結局トランプを支持した。

ポピュリズムは世界を善悪で二項対立させ単純化することで、低リテラシーの人々に訴求する特徴を持つ。そしてポピュリズム勢力がある程度大きくなった段階で、内在していた陰謀論の地金が顔を出す。

結局、陰謀論も世界の理解を「悪の組織とそれと戦う正義」という二項対立にさせて単純理解を促しているという点で、ポピュリズムの本質と何ら変わりはなく、実は両者は容易に合体するのである。

<2021年2月23日号「ポピュリズム2.0」特集より>

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プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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