Qアノンとは違う「日本型陰謀論」が保守派の間で蠢いている
つまり、保守派はキリスト教への無理解に重ね、洋の東西を問わず宗教的価値観から発せられる言説を禁忌し、またその背景にある宗教勢力や宗教団体の存在にことさら嗅覚を研ぎ澄ませている。
保守派の内ゲバの際、敵対者に対しよく使われる言葉は「Aは〇教の信者」といった呪詛であるが、これをめぐって不毛なバトルが日夜繰り広げられている。
ちなみに宗教右派勢力として話題になった「日本会議」は、実際のところ保守派の中ではマイノリティーである。特にネット右翼の中で「日本会議」会員は極めて珍しい。
今年1月6日、東京都内でトランプの勝利を疑わない新興宗教団体主催のデモ(参加約1000人)が起きたが、参加者の多くは単にネット宣伝に呼応した非信者とみられる。その主張はやはり、Qアノンの述べるキリスト教的価値観を苗床にした陰謀論よりも、バイデンの不正選挙糾弾に軸足が置かれていた。
トランプ勝利を疑わない保守派は、昨年11月の大統領選挙で「赤い蜃気楼」が起こるや否や、口をそろえてバイデンの不正選挙を主張した。
最も苛烈だったのは作家の門田隆将氏であったが、氏のSNS上での米東中部諸州での開票に不正があるというツイートが、ツイッタージャパンから「誤解を招いている可能性がある」として非表示措置になった。しかし保守派は、無邪気にもこうした不正選挙とトランプ逆転の可能性を熱心にリツイートした。
その後トランプの敗北が確定的になると、保守派は今度は投票集計装置が操作されているという陰謀論を展開し、今でも彼らはそれを信じている。その結果、前述のとおり「認識派」と称するバイデン勝利是認一派をパージ(粛清)したのだ。
民族差別の側面が強い陰謀論
Qアノンの主張する陰謀論は、日本の保守派には浸潤しづらいというのは既に述べたとおりであるが、日本には伝統的に「日本型陰謀論」という特有の陰謀論がある。
保守派が包摂するネット右翼は、日韓サッカーワールドカップが開催された2002年から勃興したが、最初の大規模な陰謀論の隆盛はいわゆる「在日特権」であった。
在日コリアンは日本国家や自治体から無税特権を受け、優遇を受けている結果、日本社会における政財官、特にテレビを筆頭とした大メディアと巨大広告代理店等を支配しているとしたが、その根拠はネット発の妄想だった。
彼らの言う「在日特権」は、その後10 年を経ても全く立証されなかったので、これに代わり2010年代中盤から勃興したのがいわゆる「沖縄ヘイト」である。この背景には中国工作員潜入陰謀論というのが横たわっている。
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