コラム

「新しい生活様式」というファシズムには屈しない

2020年07月27日(月)17時40分

ZOOM帝国の軍門に降るのはいやだ Dado Ruvic-REUTERS

<コロナ感染予防の名の下に求められる日常生活のニューノーマルを無批判に受け入れ、それに従わない者を叩く風潮に物申す>

私はなぜか知らないが「古谷はITに強い」という感じで認知されている場合がある。しかし私が最も好むのは古今亭志ん朝(3代目)の落語(CD)で、殖産の時代の生まれよろしく、まったくITなるものに興味が無いし知識もない。大学生の時にHTMLの勉強はしたものの所詮は21世紀初頭のレベルで、現在のWEBサイトがどのような構造になっているのか見当もつかない。「Bluetooth」というのをずっと「青い歯」と思っており、これが遠隔的にスマホや家電等々をつないで操作できる技術だと知ったのは約4年前のお話である。テレビ番組をDVDレコーダー(ブルーレイレコーダー)に録画する方法が未だに分からないので、用がある場合は人に頼んでいる。何なら『KAT-TUN』というグループを27歳まで「カットタン」だと思っていた。これは関係が無い。

私が扱えるのは古典的なイラスト作成ソフトとワード系ソフト。多少書籍編集ソフトも使えるがあまりにも旧式である。流石にCPUの概念は分かるが、「Celeron」の時代から知識がアップデートされていない。こんな人間に新型コロナウイルスの出現に伴う「新しい生活様式」というのを導入せよと言われても無理筋のお話である。政府もメディアも盛んに「新しい生活様式」や「日常生活のニューノーマル」を謳うが、果たしてこれに適応できる人間が全員であるかどうかは極めて微妙である。

ZOOM会議が困る理由

私は2020年で商業ライターとしてデビューしてちょうど10年になるが、いったん編集者と関係性さえできてしまえば、会議的なるもの、打ち合わせ的なるものはほとんど全部電話かメールで済ませる。たまに都心に出るときは直接喫茶店で面談をするがまずやらない方である。原稿の校正はPDFに直接手直しをして返信するか、郵送をする。これでずっと事足りてきたから何の不満もない。

しかし「ニューノーマル」というよくわからない造語によってまず働き方が変わるという。さすがに私も「ZOOM」というものをダウンロードして使う術は知っているが、これが本当にこの後も常用されるとなると実に危なっかしい。なぜなら「ZOOM」使用に際してほぼ必須となるイヤホンの銅線を、家にいる猫たちが即座にかみちぎって使い物にならなくなるからである(猫は細い糸みたいなコードが大好き)。このような理由でコロナ禍で100円ショップで買ったイヤホンを大量に備蓄しているが、正直「ZOOM」会議などやめてほしい。直接会った方が絶対によろしい。それがかなわないなら電話が一番である。それもスマホなどではなく、私が愛用している所謂「ガラケー」が電源の信頼性(電池残量耐久性)という意味で一番である。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story