コラム

「ツイッター終了」の未来

2022年11月30日(水)10時34分

社員の大量解雇・流出、企業の広告引き揚げで危機のツイッター本社 Carlos Barria-REUTERS

<イーロン・マスクによる買収以降、大混乱に陥ったツイッター。一部の噂通りもしなくなったら、我々のメディア環境は劇的に変わる>

10月末、アメリカの実業家であるイーロン・マスクがTwitter 社の買収を完了したことに伴う大量解雇及び大量退職で、Twitter 社に混乱が起きている。関係者によれば、遠くはない将来にTwitter がなくなる可能性も出てきているという。しかしTwitterは既に、我々のメディア受容の中であるのが当然のものとして認識されている。我々はTwitter なき未来を想像できるのだろうか。

大量解雇・退職に伴う「Twitter 終了」の可能性

11月18日、日本のTwitterでは「Twitter 終了」というキーワードがトレンドに上がった。もちろん実際にTwitter が終了することが発表されているわけではない。しかしTwitter 買収後にマスクが行った大量解雇や、マスクの経営方針に反発する大量退職、ドナルド・トランプのアカウント凍結解除を憂いた大手スポンサー企業の撤退など、Twitter を取り巻く環境が混沌としているのは事実だ。

関係者によれば、特に人員不足が激しいのはTwitterの障害に対応するチームだという。このことから、今後なんらかの大規模障害が生じたときに、Twitter は復旧することができず、自然に閉鎖されることになるのではないか、という予測がなされている。その大規模障害がいつ来るのかは分からないが、イーロン・マスクがこの問題に対処できない限り、いずれ終わりのときは来るというわけだ。

Twitterの拡散力に依存してきた日本社会とメディア

さて、もし本当にTwitterがなくなってしまったら、我々の社会はどのようになるのだろうか。マスクも述べている通り、日本はTwitterが最もアクティブに動いている国だ。その社会に対する影響力は計り知れない。

もちろん、Twitterをどれだけ頻繁に使っているかについては個人差がある。若い世代はInstagramやTikTokに比べてTwitterをほとんど使っていないという話もある。そうだとしても、多くの企業は自社の宣伝を行うためにとりあえずTwitterアカウントはつくるし、Twitter初のヒット商品も多い。告知や宣伝ツールとしてTwitterが優秀なのは間違いない。たとえばホームページであれば、ユーザーはそれを積極的に見に行く必要がある。しかしTwitterならば、フォロワーがRTやいいねボタンが押されることで、情報は勝手に不特定多数に拡散されるのだ。この機能は特に、個人や小規模の団体が告知や宣伝を行うにあたって極めて有用であり、他ならぬ筆者もその恩恵にあずかっている。

特にTwitterを利用しているのがメディアだ。Twitter自体も一つのメディアだが、新聞やテレビ、雑誌などのメディアは、Twitterと競合しているのではなく、もはや共依存関係にあるといってよい。たとえば大手メディアでも、芸能・社会ニュースではTwitterで話題になった発言などが記事になるし、何か事故や災害が起こった際は、資料になりそうな写真・映像ツイートがあれば、新聞やテレビ局のアカウントがリプライを飛ばして接触する。また逆に、そのようなメディアの記事にコメントすることでアクセス数を稼ごうとしているTwitterのアルファアカウントもある。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story