コラム

タリバンを野蛮と切り捨てる危うさ

2021年08月24日(火)14時24分

「女性の解放」はこうした暴力の効果として実行された。またそれは、その先10年以上にわたってアメリカがアフガニスタンに爆弾を落とし続けるための口実に使われた。そもそも中絶の権利を否定するような宗教右派の支持によって大統領になったG・W・ブッシュが、アフガニスタンの女性の権利をまともに憂慮していたとは考えにくい。この戦争に大義はない。

暴力とともに配給された人権を、その土地に根付かせることは難しい。事実としてアフガニスタンではそれが後退することになってしまった。医師の中村哲は、2019年に銃撃を受けて亡くなるまで、アフガニスタンで医療支援や緑化事業に従事していた。その彼は一貫して軍事力の行使に反対していた。物理的な暴力も、構造的な暴力も、そのどちらも拒否しようとするなら、たとえ理想だとしても、平和と人権の二兎を追う必要があるのだ。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

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