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「目の前の試合をやることしかできない」?──アスリートも例外ではない「現場プロフェッショナルロマン主義」の罪
社会を停滞させる現場プロフェッショナルロマン主義
私は「現場プロフェッショナルロマン主義」の蔓延は、日本の「失われた三十年」の原因の一つだと考えている。社会が行き詰まりをみせたとき、それを打破して新たなサイクルへと至らせるためには、政治の力が不可欠だ。
ところが、「現場プロフェッショナルロマン主義」は、その政治的な活力を奪う。「一人ひとりが与えられた責務を全うすることで世の中は上手くいく」という信仰があるので、環境問題や、差別、格差の問題への告発があったとしても、日本ではそうはいかない「現場」の言い訳(たとえばバリアフリー化は難しいと主張する駅員、医学部入試の性差別解消は難しいと主張する医者、給料を上げるのは難しいと主張する経営者)に共感が集まり、社会改良への意欲は高くならない。思考能力も奪われる。
政府与党は日本の停滞に直面して、その解消に取り組むどころか、ますます利権分配に勤しむ始末である。しかし安倍政権・菅政権下でどれだけ汚職のニュースが飛び交っても、「現場プロフェッショナルロマン主義」はそれを是正する動きを阻害する。「政治には汚職がつきもの。それが「現実」なのだ!」という容認の声が一定数集まることによって、安倍・菅政権は支持率の面で生き延びてきた。結果、利権分配ではなく公共の利益のために活動する政府は、永遠に出来ないままだ。
こうした現状ではまずいと思うのなら、我々は「目の前の○○をすることしかできない」とテンプレート的に主張するのをやめて、一人の市民として主張しなければならないことを考えた方がよいだろう。
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