コラム

ワシントンで「毛沢東」国際シンポジウム――日本軍と共謀した事実を追って

2016年09月05日(月)18時30分

今年9月9日、没後40周年を迎える「中国建国の父」毛沢東 Kim Kyung-Hoon-REUTERS

 今年9月20日、ワシントンDCの記者クラブで「日中戦争中に日本軍と共謀していた毛沢東」に関する国際シンポジウムが開催される。毛沢東没後40周年記念に際し、遂にアメリカが動いた。国際世論は形成されるか?

アメリカの大手シンクタンクProject2049が主宰――米議会議員も参会

 動いたのはアメリカの大手シンクタンク「Project(プロジェクト)2049」だ。これは共和党系の流れをくんでおり、会長は共和党のジョージ・ブッシュ前政権時代(2001年~2009年)に「国務次官補代理(東アジア・太平洋担当)」(2003年~2005年)を務めていたランディ・シュライバー氏である。彼の正式の名前はRandall Schriver だが、一般にRandy Schriver と呼ばれており、ランディ(Randy)は言うならば親しみを込めた愛称のようなものらしい。

 そのランディ・シュライバー氏は昨年、アメリカの外交専門誌「THE DEPLOMAT(ザ・ディプロマット)」(8月31日号)で、" >China Has Its Own Problems With History(中国は自分自身の歴史問題を抱えている)"として、「中国自身が中国共産党の歴史を捏造している」ことなどを指摘していた。昨年9月3日に軍事パレードを行い、「中国共産党こそが日中戦争時代に日本軍と勇敢に戦った」とする毛沢東神話をでっち上げていることに対する批判も、この論文の中には含まれている。

 そのような視点をすでに持っていたシュライバー氏は、きっと、8月31日付の本コラム「人民が党の真相を知ったら、政府を転覆させるだろう――1979年、胡耀邦元総書記」で書いた辛こう年氏同様、拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に目を留めてくれたのにちがいない。

 実は、たまたま筆者は、この概要を"Discuss Japan― Japan Foreign Policy Forum"という日本の外交政策を論じるウェブ誌に英語中国語で書いていて、その英語版が目に留まったものと思われる。

 その論文では、1939年前後、毛沢東がいかにして上海にある日本外務省の出先機関であった岩井公館と接触し、中共スパイを通して、「中華民国」重慶政府の国民党軍の軍事情報を日本側に高値で売り付けいていたかを書いた。毛沢東は「中華民族を裏切っていた」のである。これは拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』のエッセンスに過ぎないが、しかし、きっとシュライバー氏が自らの論文で書いた分析を裏付け、シュライバー氏の視点の正当性を証拠づける資料になったものと思われる。

プロフィール

遠藤誉

中国共産党の虚構を暴く近著『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)がアメリカで認められ、ワシントンDCのナショナル・プレス・クラブに招聘され講演を行う。
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与

ビジネス

英インフレ期待上昇を懸念、現時点では安定=グリーン

ビジネス

アングル:トランプ政権による貿易戦争、関係業界の打
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story