コラム

【独自インタビュー】宇宙飛行士の2人に聞いた、訓練秘話とコミュニケーションの極意(米田あゆさん・諏訪理さん)

2024年11月11日(月)17時35分
米田あゆさん、諏訪理さん

約1年半の基礎訓練を終え、宇宙飛行士に認定された米田あゆさんと諏訪理さん(独自インタビューにて筆者が撮影)

<宇宙飛行士訓練に活かされた過去の経験、月・火星探査時代の地球科学の役割、そのコミュニケーション力はどこから? 宇宙飛行士に認定されたばかりの2人に独自インタビューで聞いた>

先月21日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士候補だった米田あゆさん(29)と諏訪理さん(47)が宇宙飛行士として正式に認定されました。

JAXA宇宙飛行士は、候補を決める選抜試験に通ったからといって、すぐに認定されるわけではありません。科学知識や各国の宇宙開発プログラムに関する座学、航空機の操縦や地学のフィールドワークといった実技など多岐にわたる基礎訓練を1年半~2年間ほど受けます。基礎訓練修了後、審査委員会が総合的に判断し、宇宙飛行士の要件を満たすと認めた場合に宇宙飛行士の認定が得られます。

晴れて認定を受けた直後の米田さん、諏訪さんに、独自インタビューを行いました。前編では「宇宙での実験を自分でデザインできるとすれば、何をやりたいか」「宇宙開発におけるAIと宇宙飛行士の棲み分けや、宇宙飛行士が人間である意義」などを質問し、2人の回答を紹介しました。

後編となる今回は、「過去の意外な経験が宇宙飛行士訓練に活かされたエピソード」「月・火星探査時代の地球科学の役割とは?」「なぜ米田さん、諏訪さんはそんなにコミュニケーション力があるの?」などについて、話を聞いていきます。

◇ ◇ ◇

──宇宙飛行士認定の記者会見では、基礎訓練についても語ってくださいました。それで思い出したのですが、今年の東大の入学式の祝辞で、米田さんが「コネクティング・ザ・ドッツ(Connecting the dots:「過去の経験が予想外の形で活かされたこと」の比喩)」というスティーブ・ジョブズの言葉を引用されていたのがとても印象的でした。おふたりが基礎訓練中に、「過去の経験が思いもよらない形で活かされたな」と思ったエピソードがあったらぜひ教えてください。

米田 私、実は幼少期に水泳をやっていて、特にシンクロナイズドスイミング(現在はアーティスティックスイミングに改称)をやっていた時期があったんですね。当時はもちろん、宇宙飛行士になることとはまったく結びついていなかったのですが、(宇宙飛行士の基礎訓練中の)水泳訓練で「不時着して海に落ちたときに生き延びるために、立ち泳ぎをしなきゃいけない」というものがあったんです。宇宙服を着て立ち泳ぎを15分したのですが、本当にもう、小学校当時の技術がそのままそっくり役立って、全然余裕と言いますか、「昔の感覚を思い出すな」っていう感じで、「まさかここでそれが活きてくるのか」と思いました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州エネルギー大手、24年は気候変動対策を後退 短

ワールド

韓国情報機関、負傷した北朝鮮兵が捕らえられたと確認

ワールド

中国工業部門利益、1─11月は前年比4.7%減 マ

ビジネス

米経済の不確実性一巡まで「注視する辛抱強さ必要」の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部の燃料施設で「大爆発」 ウクライナが「大規模ドローン攻撃」展開
  • 4
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 5
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 8
    わが子の亡骸を17日間離さなかったシャチに新しい赤…
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story