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「月を生んだ」原始惑星の残骸が地球内部に? 月の起源の研究史と新説の論点
太古の地球に衝突したとされる「テイア」の破片は今日まで発見されていない(写真はイメージです) Naeblys-Shutterstock
<カリフォルニア工科大などの研究チームが発表した新説で、月の起源をめぐる議論は新たなフェーズを迎えるのか。これまでに提唱されてきた由来の研究史とともに概観する>
今から約45億年前に地球に衝突し、月が誕生するきっかけとなった原始惑星の残骸が地球内部に残っている可能性があるとする新説を、米カリフォルニア工科大などの研究チームが英科学誌「ネイチャー」(11月1日付)に発表しました。
月がどうやって地球の衛星になったのかについては、現在は「ジャイアント・インパクト説」が主流です。地球が約46億年前に形成されてからまもなく、火星とほぼ同じ大きさ(地球の直径の約半分)の原始惑星「テイア」が地球に斜めに衝突し、その破片は地球のマントルの破片とともに地球軌道に飛び散り、後にそれらが合体して月になったとする説です。
けれど、地球に衝突したとされる「テイア」の破片はこれまでに見つかっていません。この説を信じる研究者らは「テイアが地球に残した残骸は、地球内部で高温のために溶解した」などと説明してきましたが、直接の証拠はありませんでした。
今回、研究チームは、「地球全体を見たときに核とマントルの境界で地震波の伝わり方が違う部分があり、それは今でも地球内部に部分的に残っているテイアの残骸と考えられる」と提唱しました。
この研究を機に、月の起源に関する議論は新たなフェーズを迎えるのでしょうか。月の由来の研究史とともに概観しましょう。
「親子説」「兄弟説」「他人説」の欠陥
月は「母惑星(地球)に対して大きすぎる衛星」として知られています。たとえば、火星最大の衛星フォボスの直径は火星の約268分の1、木星最大の衛星ガニメデの直径は木星の約27分の1なのに対して、月の直径は地球の約4分の1です。そこで、月の起源については古来様々な仮説が立てられてきました。
ジャイアント・インパクト説以前は、地球との「親子説」「兄弟説」「他人説」の3説で論争が起きていました。
親子説は、高速で回転していた原始地球の一部がちぎれて月になったとする説で、「分裂説」とも呼ばれています。兄弟説は、太陽系が形成された時に塵の円盤から地球と一緒に形成されたとする説です。他人説は、月は地球とは別の場所で形成されたが後に地球の引力に捕らえられて衛星となったとする説で、「捕獲説」とも呼ばれています。
けれど、親子説では星がちぎれるほどの大きな力学的エネルギーが本当に存在したのかという問題があり、兄弟説や他人説では地球のマントルと月の化学組成がよく似ていることの説明ができません。過去には、月のような大きな天体が地球に捕獲される確率は非常に低いという計算結果も示されました。
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