コラム

5類引き下げ前におさらいする、新型コロナのこれまでとこれから

2023年05月02日(火)15時10分

日本では、新型コロナの新規陽性者数をグラフに描いた時、急激に数が増えているヤマの部分を「第◯波」と呼んでいます。これまでに、8回の感染拡大の波がありました。

・第1波(20年3月~5月頃):20年1月に初の感染者が確認され、3月下旬に感染者が急増。4月7日に初めて「緊急事態宣言」が発出。ピークは全国で644人(4月11日、厚労省集計データ。以下同)。
・第2波(20年7月~8月頃):感染者は第1波を上回ったものの「緊急事態宣言」は行われず飲食店への時短要請のみ。ピークは全国で1597人(8月7日)。
・第3波(20年11月~21年2月頃): 1月7日に2度目の「緊急事態宣言」を発出した直後に、全国で8045人(1月8日)と過去最高を更新。
・第4波(21年3月~6月頃):変異ウイルス(アルファ株)による感染拡大。初の「まん延防止等重点措置」と3回目の「緊急事態宣言」。
・第5波(21年7月~9月頃):デルタ株による感染拡大。4回目の「緊急事態宣言」のさなかの東京五輪。8月20日に全国で2万5975人と過去最多を更新。
・第6波(22年1月~3月頃):オミクロン株による感染拡大。2月1日に全国で10万4520人と初めて10万人を突破。
・第7波(22年7月~9月頃):オミクロン株派生型「BA.5」の強い感染力による。7月15日に国内累計感染者数が1000万人を突破。8月19日に過去最高の26万1004人。
・第8波(22年11月~23年1月頃):オミクロン株でBQ.1、XBB系統など新たな変異株が蔓延。致死率は低いが、感染者が多いため死亡者が増えた。1月6日に国内累計感染者数が3000万人を突破。1月14日に1日あたりの死亡者数が初めて500人を突破。

新型コロナ対策について助言する厚生労働省の専門家会合は4月19日、現在の状況について「新規感染者数は全国的に緩やかに増加していて、特に大都市部で20代や10代以下の増加が見られる」と分析しました。

また、専門家会合の脇田隆字座長ら4人の有志は5類への移行後について「第8波を超える規模の『第9波』が起きて、亡くなる人の数は高齢者を中心に海外と比べて多い状況で推移する可能性がある」と予測する文書も発表し、警戒を呼びかけています。

2. 結局、ウイルスはどこからきたのか

新型コロナウイルスの広まりの経緯は、「中国・武漢のウイルス研究所から流出」「中国・武漢の食品市場で動物からヒトに感染」「イタリアで武漢での流行以前に拡散」の3つの仮説が知られています。

ウイルスの出どころに関する最新の話題は、23年2月に米エネルギー省が「中国・武漢の研究所から流出した可能性がもっとも高い」と結論づけたことです。同省はこれまでは新型コロナウイルスの広まりの経緯について言及していませんでしたが、ホワイトハウスや米議会の主要議員に提出した改訂版の機密情報報告書の中で今回の考えを示しました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 8
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story