コラム

学習時間より成績に影響... コロナ禍で「勉強のやり方」が分からない子どもが7割に?

2023年04月18日(火)12時30分

調査では、子どもたちがどんな学習方法を行っているかについて具体的に尋ねました。19年から4年連続で共通している選択肢は下記の10個です。

1. 考えてもわからないことを聞く(援助要請方略)
2. 遊ぶときは遊び、勉強するときは集中して勉強する(メリハリ方略)
3. テストで間違えた問題をやり直す(解き直し方略)
4. くり返し書いて覚える(反復方略)
5. 何が分かっていないか確かめながら勉強する(モニタリング方略)
6. 友だちと勉強を教えあう(社会的方略)
7. 自分に合った勉強のやり方を工夫する(自己調整方略)
8. 計画をたてて勉強する(プランニング方略)
9. 問題を解いた後、ほかの解き方がないかを考える(意味理解方略)
10. 授業で習ったことを、自分でもっと詳しく調べる(深化方略)

小4~小6:中学生:高校生を1:1:1になるように調整した結果、10の方法のすべてで学習方法の理解群のほうが不明群よりも高い割合で採用しており、差の大きい上位5つは、自己調整(理解群73.4%、不明群49.7%で23.7ポイント差)、プランニング(64.1%と42.8%で21.3ポイント差)、モニタリング(74.5%と54.7%で19.8ポイント差)、メリハリ(81.2%と63.4%で17.8ポイント差)、意味理解(45.7%と28.0%で17.7ポイント差)でした。対して、社会的(62.3%と58.4%)と援助要請(79.7%と71.9%)は両群であまり差は見られませんでした。

成績優秀者が実践していること

さらに成績による勉強法の違いを調べるために、5教科(小4のみ4教科)の合計について、学年ごとに上位層、中位層、下位層が均等になるようにして分析すると、上位層と下位層の差がついている勉強法のトップ5は、自己調整(上位72.6%、下位41.5%で31.1ポイント差)、モニタリング(75.2%と46.5%で28.7ポイント差)、解き直し(79.7%と53.4%で26.3ポイント差)、プランニング(62.6%と37.4%で25.2ポイント差)、意味理解(47.2%と22.1%で25.1ポイント差)でした。

研究者たちは「成績優秀者は、自分の学習の状況や問題の内容を客観的にとらえる『メタ認知』を働かせる学習を実践しているようだ」と説明しています。つまり、教科ごとの目標やペース、使用教材の計画を自分で立てたり、できなかったことをやり直してできるようにしたりすることを実践しているということです。

さらに、成績上位層ほど「論理的に考えることが得意」「一度決めたことは最後までやりとげる」という設問に対して肯定的に回答する傾向がありましたが、いずれの成績層でも「学習方法・理解群」のほうが肯定者は多い結果になりました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story