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赤ちゃんの「もぞもぞ動き」は、将来複雑な運動を習得するための準備であることが明らかに
乳児のほうが新生児よりも感覚由来の情報伝達が少なく、運動由来の情報伝達が多いことが分かった(写真はイメージです) kuppa_rock-iStock
<赤ちゃんの感覚と運動の間にどのような情報が流れているのか──定量的な測定の難しさからその関係を科学的に説明するのは困難とされてきたが、東大の研究チームが解明に成功>
生後数カ月の赤ちゃんは、特に目的もなく、手足をもぞもぞと動かすことがあります。
外部からの刺激を受けて行われるわけでも、赤ちゃんが意識的に実施しているわけでもないことから、「自発運動」と呼ばれるこの動きは、将来の発達に重要な役割を果たしているはずだと古くから考えられてきました。
もっとも、これまでは、自発運動にはどんな意味があるのか、動いている最中に赤ちゃんの身体では何が起こっているのかについては、十分な知見は得られていませんでした。
東大大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻の金沢星慶特任助教、國吉康夫教授らの研究グループは、赤ちゃんの関節にモーションセンサーを付けて動きを観測し、筋骨格モデルを併用することで「もぞもぞ動き(自発運動)」を科学的に分析しました。
その結果、ヒトは発達初期の自発運動によって、感覚運動に関する時間的および空間的パターンを獲得し、将来的に全身の高度なコントロールが必要な歩行や、予測的な動きができるように準備していることが分かりました。研究成果は、22年12月27日付の『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』にて公開されました。
成長とともに反射的な運動が減少し、意思に基づく随意運動が増加
「もぞもぞ動き」は、ヒトが最も早く経験する全身の自発的な動きです。これまでも、神経成熟と関連が深いと考えられ、月齢に伴う運動のパターンや協調の発達段階について報告がされてきました。さらに医療現場でも、赤ちゃんの自発運動の観察は、四肢の障がいや脳性麻痺などの早期予測に用いられてきました。
けれど、定量的に測定することの難しさもあって、自発運動中の赤ちゃんの感覚と運動の間にどのような情報が流れているのかについては、科学的に説明をするのは困難でした。
今回、研究チームは、生後1週間未満の新生児12名と生後3カ月の乳児10名に対して、全身12カ所の関節(26の自由度)にモーションセンサーを付けて動きを計測しました。また、関節運動の計測データに筋骨格モデルを組み合わせることで、全身の144本の骨格筋の活動と固有感覚を推定しました。
次に、筋活動と固有感覚の間に生じている情報の流れについては、288×288(=82944)通りについて統計的に処理し、関係性が高いと思われる22個の感覚運動モジュール(複数の筋肉の活動や感覚で構成される機能的グループ)を抽出して、さらに分析しました。
22個のモジュールの情報の流れの密度を算出して、どのようなモジュールペア間で情報伝達が多いか、少ないかを評価すると、乳児グループは新生児グループと比較して、感覚由来の情報伝達が少なく、運動由来の情報伝達が多いことが分かりました。これは、ヒトが成長するにつれて、反射的な運動が減少し、意思に基づく随意運動が増加することを示唆しています。
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