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犬猫マイクロチップ装着の3つの利点 他の動物、人間の埋め込み状況は?
装着の第二の利点は、マイクロチップを読み取ると飼い主の登録情報が明らかになるので、飼育放棄の抑止効果があることです。ただし、住居移転で連絡が取れなくなったり連絡しても無視する飼い主がいたり、飼い主の変更が登録されていなかったりする場合もあり、万全とは言えません。マイクロチップに頼りすぎず、「最後まで飼う」という飼い主の責任に関する啓蒙活動や、遺棄に対する罰則規定を充実させることも必要でしょう。
第三の利点は、千葉県木更津市で5月に発生した「ドーベルマンの盗難事件」のような場合、見つかった時に「自分が飼い主だ」と証明できることです。とくに純血種の犬や猫は、盗難にあったり、逃げ出した場合に保護した人が連絡せずにそのまま飼ったりするケースがあります。これまでは、本当の飼い主が盗難された犬や猫を見つけても、盗難者に「自分の犬(猫)だ」と言い張られると反論することは難しかったのですが、マイクロチップを装着していれば証拠を突き付けることができます。
より簡便で確実な個体識別を目指して
動物への電子標識の装着は、伴侶動物に対してばかりではありません。
乳牛では個体識別のために、番号やバーコード方式の耳標とともに、1980年代から札型、ボタン型の耳標や、飲み込み式など様々な形態で電子標識器具が使われてきました。1996年には、動物全般の個体識別に関するISO規格が制定されます。
その後、2001年に牛海綿状脳症(BSE)が発生し、対策としてトレーサビリティ(個体の追跡可能性)が重視されるようになります。バーコード方式は安価なものの、牛に近づいて一頭ずつ読み取る必要があります。電子標識器具を使えば、比較的離れたところからでも読み取れて、通路上などに読み取り機を取り付けて自動化できるため、さらに注目を浴びるようになります。
競走馬に対するマイクロチップ装着も、1990年代に西欧から広まりました。レース前の個体識別を、より簡単かつ確実にするためです。
マイクロチップが普及する前までは、馬の個体識別は獣医師が馬の特徴を描いた図を見ながら、毛色、白斑(顔や肢の白い部分)、旋毛(つむじ)を詳細に確認していました。競馬場でレースの前に必ず「その馬で間違いないこと」をチェックしないと、似たような馬とすり替えて、不正を働くこともできてしまうからです。
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