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100年ぶりの新しい細胞分裂様式「非合成分裂」は教科書を書き換えるか?
ゼブラフィッシュの特殊な細胞分裂は、効率的に細胞の数を増やすため?(表層上皮細胞の全体を観察するために細胞を1つずつ色分けされたゼブラフィッシュの幼生) nature video-YouTube
<ゼブラフィッシュの表層上皮細胞でDNA複製を伴わない細胞分裂が行われるのは、「急いで細胞を増やすためではないか」と台湾・中央研究院の陳振輝博士らの研究グループは予想する。この仮説が広く受け入れられるために必要なのは?>
台湾・中央研究院の陳振輝博士らの研究グループは、小型魚のゼブラフィッシュの表層上皮細胞(SEC)の観察から、DNAを複製しない新しい様式の細胞分裂「非合成分裂」が行われていることが示唆されたと5月5日付の英科学誌「Nature」に発表しました。もし普遍的な現象であれば、生物の教科書が書き換わるほどの大発見です。
生物の条件と細胞分裂の種類
生物とは、そもそも何でしょうか。統一された定義はありませんが、一般的には①自己複製する、②細胞で構成されている、③代謝を行う、の3つの条件が受け入れられています。
「ウイルスは生物なのか?」を考えながら、もう少し詳しく見てみましょう。
①は、自分の遺伝情報を受け継ぐ子孫を自分で生み出せることです。ウイルスは自己複製するので、条件を満たします。
②は、「生物は細胞を持ち、細胞膜で外界との境界が明瞭になっている」という意味です。ウイルスは、遺伝情報である核酸(DNA又はRNA)をタンパク質の殻(カプシド)に包んでいます。外界との境界は明瞭ですが、ウイルスは細胞を持ちません。
③は、自分自身で生命維持活動のための化学反応を行うことです。ウイルスは代謝を行っていません。
②と③の条件を満たしていないので、インフルエンザやCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)でおなじみのウイルスは、この定義に沿うならば生物ではありません。対して、コレラや大腸菌感染症で知られている細菌は、すべての条件を満たしているので生物と言えます。
生物は、細胞に核を持たない「原核生物」と、持つ「真核生物」に大別できます。
原核生物は、細胞が1つだけで構成されています。細胞の中には、特化した機能を果たすために分化した「細胞小器官」と呼ばれる構造をほとんど持ちません。自己複製のための細胞分裂が起きると、1つの個体が2つに増殖します。
真核生物の細胞の中には、遺伝情報の保存と伝達を担う核以外にも、ミトコンドリア、リボソームなどの豊富な細胞小器官が含まれています。細胞分裂では染色体(DNAが折りたたまれた構造)を作り、「有糸分裂(体細胞分裂)」と「減数分裂」を行います。
有糸分裂は、真核生物の「通常の」細胞分裂です。1個の細胞が2個の細胞に分かれます。分裂前に細胞内でDNAの複製が作られて、分裂後の2個の細胞にそれぞれ分配されます。分裂後の細胞は、分裂前と同じ数の染色体を持ちます。
対して、生殖細胞(卵子と精子)では、分裂後の細胞の染色体の数が元の半分になる「減数分裂」が起こります。卵子と精子が結合した受精卵で、染色体の数を元に戻すためです。
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