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コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
カラチ・コネクション
先日パキスタンのカラチに住む友人のジャーナリストと話していた時のこと。何時間か前に爆弾テロが発生し、カメラマンを現場に派遣したばかりだと言う。
彼は、「連中は金融都市のカラチにも侵入してきている」と嘆いていた。「連中」とは、パキスタン・タリバン運動の過激派のことではない。パキスタンのアフガン国境地域に逃げ込んでいたアフガニスタンのタリバンを指している。
というのもパキスタン・タリバンは実際のところ、NWFP(北西辺境州)とFATA(連邦直轄部族地域)で昨年から続くパキスタン軍の掃討作戦から逃れるために、すでに南部のカラチにまで入り込んでいた。さらに、地元のギャング団と手を組んで犯罪行為に加担しているとも言われていた。
報道によると、友人と話す前に発生した2月5日の爆弾テロでは、スンニ派武装組織がシーア派を狙い撃ちにして、少なくとも31人が死亡した。シーア派を狙ったテロは昨年後半から何度も発生している。それほどまでに、パキスタンではタリバンの存在感が増している。
先日、アフガニスタンのタリバンのNO.2といわれるムッラー・バラダルがカラチ近郊で拘束された。彼はタリバンが94~96年に台頭する前から、アフガン南部でタリバンの最高指導者オマル師と生活をともにし、01年に米軍がカンダハルを攻撃した際にも共にいたほどの側近だ。
ただ皮肉なことにタリバン政権崩壊以降に立ち上がった若いタリバン兵は、過激なテロ組織アルカイダの考え方により近いといわれる。穏健派とも言われるバラダルの逮捕は、911以前の古いタリバンの衰退を意味するとの向きもある。
バルチスタン州クエッタにいると言われてきたオマルは昨年末、カラチに潜伏しているとの話が出ていた。そうだとしても、今回のバラダルの逮捕で、彼がまた別の場所に姿をくらましたと見るのが普通だ。
ただ「偶然に」逮捕できたとするパキスタン政府がわざとNO.2を拘束して、他国からのオマルへの注意をそらした可能性もないとはいえない(今回の逮捕はCIAとパキスタン軍統合情報局の合同作戦だったとの話もあるが、実際は後者が主導したとの見方が強い)。1つだけ確実なことは、今回の逮捕で、パキスタンがアフガンのタリバン勢力を掃討するよう圧力をかけ続けるアメリカの溜飲を多少下げたことだ。
タリバンの穏健派を懐柔しようとするアフガニスタンのカルザイ政権はすでにモルジブなどでタリバン幹部と会談を行ったとの報道もあるし、パキスタン政府はアフガニスタンとタリバンとの橋渡しをアメリカに申し出ている。
この時期にパキスタンがタリバン幹部の居所をつかんでいると暗に示すことは、アフガニスタン安定に「関与(決していい意味で、ではない)」したいパキスタンにとって非常に重大な意味を持っているといえる。
――編集部・山田敏弘
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