コラム

瞑想アプリからブレインインターフェイスまで、投資家が選ぶTransTech製品ベスト4

2020年01月21日(火)12時55分

Oura

CTR Capital社のGordy Bal氏のイチオシは、スマートリングのOura。いわゆる活動量計なんだけど、主に睡眠の質を高めるための工夫がされているもよう。取得できるデータはApple Watchに近いのかもしれないけど、電池が長持ちなので睡眠時間中も睡眠の質を計測してくれるらしい。値段は3万円超。Apple Watchも同様のことができるのに少し高い気はするが、YouTubeを見たらOuraを絶賛するレビュー動画を幾つか見つけた。やはり専用機器だけにセンサーとしての精度が高いみたい。アスリートや健康に関心のある人には大変好評のようだ。

Yukawa200120_2.jpg

Ouraホームページより


Bal氏によるとOuraのCEOは、ニューヨークのヘッジファンドで大成功したが睡眠不足が原因で幸福ではなかった。よりよい睡眠を求めて開発したのがOuraで「Ouraの経営陣の本気度がすごい」と絶賛している。

Vielight

Kingcedar Holdings & Affiliate社のJohn H. Cammack氏は、近赤外線ヘッドギアのVielightを推薦している。近赤外線を脳に照射することで、脳内細胞のミトコンドリアが活性化するという仕組み。「アルツハイマーや認知症にも大きな効果がありそうだし、CEOは起業家としても大変すばらしい人物だ」と絶賛する。

実は僕も、シリコンバレーに出張した際にこのヘッドギアを試着したことがある。もちろん痛くもかゆくもなく、20分ほどするとかなり深い瞑想状態に入った。瞑想が苦手な人にも効果があるかもしれない。

Yukawa200120_3.jpg

Vielightホームページより


Paradromix

Joyance PartnersのJun Deng氏は、「多数のベンチャーに投資しているが、1社選ばなければならないのだとすれば、Paradromix社だ」と言う。paradromix社は脳とコンピューターをつなぐブレイン・コンピューター・インターフェイスのベンチャー企業で、米軍の研究機関からの支援も受けている。同社が開発したICチップは、脳内に埋め込むことで脳内の電気信号を記録すると同時に電気で刺激を脳に与えることできるという。

脳とコンピューターをつなぐ研究は長年行われてきたが、最大の問題は大量のデータの伝送方法だと言われる。コンピューターは高速計算が得意だが、1度に1つの計算(逐次処理)しかできない。一方で、脳は計算速度は遅いが、大量の計算を同時に並列に処理できる。同社のチップは、脳の並列処理のデータをコンピューターの逐次処理に変え、コンピューターの逐次処理のデータを並列処理のデータに変換できるのだという。「脳のブロードバンドモデムのようなチップ」らしい。

Deng氏は「臨床試験で同社のICチップの安全性が確認されれば、精神疾患に苦しむ多くの人への救いとなるだろうし、体が不自由な人は機械の腕や足を自由に動かせるようになるだろう」と語っている。

最初の応用例として、脳内に埋め込んだチップとスマートフォンを接続する製品を開発中らしい。頭の中で考えていることが、スマホを通じて音声やテキストに変換される製品になるという。脳の損傷などで発声能力を失った患者にとっては、すばらしいツールとなりそうだ。

Yukawa200120_4.jpg

Paradromix社ホームページより


【著者からのお知らせ】
■優秀な仲間たちと社会課題を解決しよう
エクサウィザーズ の強みは、技術力xビジネスセンス。社会課題の解決に向け急成長中。エンジニアだけではなく、ビジネスサイドの人材も必要なんです。チャレンジ精神旺盛な方大募集です。
集え!社会を変えるウィザード達

20200128issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日製副会長、4月1日に米商務長官と面会=報道

ワールド

米国務長官、4月2─4日にブリュッセル訪問 NAT

ワールド

トランプ氏「フーシ派攻撃継続」、航行の脅威でなくな

ワールド

日中韓、米関税への共同対応で合意 中国国営メディア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story