コラム

21世紀最大のビジネスチャンス「ヘルスケア」に挑むAmazonの可能性

2018年02月09日(金)13時09分

Bloomberg

How Amazon & Co. Could Fix Health Careという記事で次のように分析している。


・3社の従業員を合わせると、約100万人。かなりの規模だが、それでも米医療業界と敵対するには十分な大きさではない。100万人の規模感をテコに医薬品を買い叩こうと強気の交渉をすると、米国最大の業界である医薬品業界からの反発を受けることになるだろう。

・米国の医師の給料は、先進国の中で最も高く、Amazonが医療コストを下げるのであれば、外国人の医師を雇用するしかない。家族を合わせると約300万人の医療を担当するには、7800人から1万2300人ほどの医師が必要だ。3社の力を合わせれば採用できないレベルの人数ではないが。

・オフショアの遠隔医療を使うという手もある。慢性疾患の患者など入院日数が長い場合は、ビジネスクラスで患者を海外の病院に輸送するという手もある。


Money誌

同誌はHow Amazon Will Drastically Change Health Care, According to Futuristsという記事で、未来学者の意見を集めている。


・未来学者たちは以前から、Amazonが医薬品を取り扱うことになるだろうと予測してきた。「既に美容やサプリメントの売り上げがかなりの額になっている。なのでAmazonが医薬品を取り扱うのは、時間の問題。ユーザーのデータを解析することで、ユーザー一人一人に合った医薬品を取り扱うようになるだろう」(James Canton氏)

・「心身の健康状態、摂取栄養量、再生医療データなどを解析してユーザーに提供し、一般的な消費者でも、自分のどこが悪くて、どうすれば治すことができるかを簡単に理解できるようになるだろう」(同氏)

・平均寿命が伸び、75歳は中年になる。そうなるためには健康的な生活を送る必要があり、「Amazonは、健康増進を非常に大きな市場チャンスだととらえるようになるだろう」(同氏)

・「薬は3Dプリンターで、一人一人に合ったものが作られるようになる」(Thomas Frey氏)「医者が処方箋で指示した薬の量ではなく、患者のその日の健康状態に応じた薬の量が、自動的に配合されるようになるだろう」

・Frey氏は、Amazonが現在の米国のヘルスケア産業を進化させるという見方ではなく、まったく別の産業を作るという見方をしたほうがいいと言う。「最も大きな変化は、医薬品会社がコントロールしてきた業界から、データドリブンの業界へと移行することだ」(同氏)。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米マスターカード、第4四半期利益が予想上回る 年末

ワールド

米首都近郊の旅客機と軍ヘリの空中衝突、空域運用の課

ワールド

ブラジル大統領、米が関税賦課なら報復の構え

ワールド

米旅客機空中衝突事故、生存者なしか トランプ氏は前
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 4
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 5
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 10
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story