コラム

Amazonが、AIを人間の親友にする?「Alexa Prize」に要注目。

2017年02月14日(火)14時47分

審査方法は、政治やスポーツ、芸能など、一般的なトピックについて20分間に渡って、人間が交わすような対話を継続できるかどうか、というもの。

4月からの各チームのソーシャルボットとユーザーとの対話データを解析し、8月には数チームに絞り込んだファイナリストが発表される。その後はファイナリストのボットのみがAlexaに搭載され、さらにデータを解析し、優勝者が11月に発表される予定。

優勝したチームには50万ドルの賞金が授与されるほか、そのチームが所属する大学には100万ドルが寄付されることになっている。

タスク型と雑談型

実は文章ボット、音声ボットに関わらず、ボットにはタスク型と雑談型の2種類がある。タスク型は、何らかのゴールに向かって、メッセージをやり取りをするもの。例えば天気予報を問えば、「今日は晴れるでしょう」と答えてくれるのは、タスク型。商品の選択を支援し、購入にまで導くというのもタスク型だ。現在AmazonEchoに搭載されているAlexaはタスク型だ。

一方で雑談型は、文字通り雑談のためのボット。雑談こそが目的で、対話の収束を目指していない。

同じボットの技術でも、実はこの2つは目指している方向も、その仕組みも全然違うものになる。

というのはタスク型だと、ユーザーとのやり取りは少なければ少ないほどいい。何往復もやり取りが続いているということは、ユーザーが目的に達していないことを意味する。

反対に雑談型は、やり取りが多ければ多いほどいい。やり取りが少なければ、話が噛み合っていない可能性があるからだ。

またタスク型のボットは、用語や情報が特定の領域に限定されることが多い。家電のECサイトのボットなら、家電製品の用語や情報だけに詳しければいい。

雑談型のボットは、話題が何になるか分からず、いろんな話ができなければならない。

つまり技術的には、雑談型のほうがタスク型の何倍も難しいわけだ。

【参考記事】深い感動を導くアマゾンの音声AIアシスタント+コンテンツの可能性

画像認識、音声認識で一定の成果をあげたAI研究は、そのフロンティアが言語理解に移行しつつある。

そこで昨年秋ごろから僕は、日米の自然言語処理の研究者やベンチャー企業を取材して回っている。しかし「雑談はまだまだ」という意見が圧倒的に多く、「雑談型ボットの開発をいったん諦めました」というベンチャー企業の社長もいた。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story