コラム

LINEチャット対応でデータを蓄積、トランスコスモスのAI戦略

2016年09月09日(金)14時42分

 動きの速いデジタルマーケティング企業は、トランスコスモス同様、AIの進化を受けた全自動チャットボットの可能性に気づいている。サイバーエージェントは7月1日に、チャットボットを專門とする子会社、株式会社AIメッセンジャーを設立。沖縄にチャットセンターも設立した。有人によるチャット対応でデータを集めて、チャットボットのAIを進化させるつもりだろう。狙いは、トランスコスモスと同じだ。

【参考記事】人工知能、「予測」を制する者が世界を制す

 トランスコスモスには有人対応のデータの蓄積があり、AI時代に向けて非常に有利な立ち位置にいるとも言えるが、一方でコールセンターが主要事業の同社にとって、有人対応をチャットボットに移行させることは、自ら自分の首を絞める行為でもある。

カギは有人段階でのデータ集め

「少し前までは、チャットボットによってわれわれのコールセンター業務が大打撃を受けるのではないかという懸念の方が強かった。でも專門の子会社を設立した辺りから、社内のムードが一変。今は座して死を待つより、ファーストムーバー・アドバンテージを取っていきたいという思いが強くなっています」と貝塚氏は言う。「結構、本気です。トランスコスモスは変化に強い会社。これまでも何度もパラダイムシフトを乗り越えてきた。今回もピンチをチャンスと捉えて、大きく羽ばたくつもりです」。

 人工知能の急激な進化は、間違いなく大きなパラダイムシフト。マーケティング、物販の世界は、チャットボットという人工知能が先頭に立って、業界の勢力図を塗り替えていこうとしている。勝敗を決めるのは、人工知能を賢くするためのデータを持っているかどうか。有人対応というアナログな手法でデータを集め始めたところが、後に大きく飛躍することになる。勝負の分かれ目は、今だ。

2歩先の未来を創る少人数制勉強会TheWave湯川塾主宰
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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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