コラム

LINEチャット対応でデータを蓄積、トランスコスモスのAI戦略

2016年09月09日(金)14時42分

 さらには、手軽さもある。電話と違って本名を名乗る必要もない。「ニックネームのまま来店予約もできるんです」(貝塚氏)。電話と違って、思いついたその場で連絡できる。「電車の中でも、問い合わせが可能」「コミュニケーションの障壁が大きく下がるんです」(貝塚氏)。

 トランスコスモスでは、チャットマーケティングの領域の将来性を見込んで今年5月に、專門の子会社であるtranscosmos online communications株式会社をLINE株式会社と共同で設立。7月には、ダイエット特化ジムのライザップの公式アカウントの運用代行を始めた。「コンプレックスに関する話題なので、店頭よりもLINEのほうが相談しやすいみたいです」(貝塚氏)という。

【参考記事】女子高生AI「りんな」より多才な人工知能が中国で生まれたワケ


 ほかには、チャットマーケティングはどのような領域に向くのだろうか。貝塚氏によると新規顧客開拓にも有効だが、既存顧客とのコミュニケーションにも役立つという。チャットを通じて顧客の要望やニーズに細かく対応できるからだ。「そういう意味では、高額商品の顧客対応に向いていると言えますね。もしくは携帯電話や有料放送など、既存顧客にしっかり対応できれば、ずっとメンバーでいてくれるようなサービスに向いているかもしれません」。

 また緒方氏によると「チャットは、リアル店舗とECサイトの中間に位置する存在になる」と言う。リアル店舗のような開店時間の制限もなく、運営コストもかからない。でもECサイトよりも、密なコミュニケーションが可能だからだ。「チャットは、店舗やサイトなどの異なるチャンネルをスムーズに結びつけるようになり、コミュニケーションの『落ち』がなくなる」と指摘する。

通信記録を人工知能へ

 だがチャットの最大の魅力は、人工知能(AI)につながっていくという将来性にあるという。

 有人のチャット対応で蓄積されたコミュニケーションの記録は、データとしてAIに読み込ませることが可能。AIはデータが増えれば増えるほど賢くなっていく。賢くなったAIは、人間並みの受け答えが可能なチャットボットとして成長していくことになる。

 最終的には全自動のチャットボットになるのだろうが、まずは有人対応とチャットボットのハイブリッド型に移行するものと見られている。トランスコスモスでは、ハイブリッド型の体制に移行する準備は既にできているという。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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