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人工知能はデータを富に変えられない、人間の「欲」が不可欠だ
前出の経産省主催のデータ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会は2014年6月に設立され、200社以上が参画。65社がデータジャケットを登録し、データの利活用方法について検討を行う一連のワークショップを開催している。
またデータ利活用に関心のある民間企業の連合体であるデータ・エクスチェンジ・コンソーシアム(DXC)でも、2014年度はデータジャケットの入力と可視化を含む計6回のワークションプを実施している。
「人間は考えなくてよくなるはウソ。実際は逆」
ただ企業が集まったワークショップでは、他社の動きの様子見にとどまったり、ブレーンストーミングに終始するケースが多いようだ。大澤教授は、「この方法はブレーンストーミングではありません。大事なのはデータと交わり、データを介して人と交わることによってゴールを定め、ゴールまで行くという目的志向。それが可能な仕組みなんですから」と指摘する。
大澤教授の研究室が中心になって行うIMDJ(Innovators Marketplace on Data Jackets)と呼ばれるデータ市場のワークショップは、ゴールに達するまで徹底的に議論し、実行する方法だ。
例えば、安全な都市生活を検討することを目的にしたワークショップでは、シナリオマップにおいて「バスの運行状況」というデータと「モニタリング画像」のデータを組み合わせれば、道路のでこぼこ具合などが、バスの安全運行や運行の遅れにどのような影響を与えるのかを確認できるだろうという提案がなされた。その中で、歩行者が安全に歩けることがバスの運行遅れを防ぎ安全性を高めるのではないかという議論に発展。ただ歩行者の安全を守る街路灯がどこに存在し、どれだけ明るいのか、街路灯の所在情報を示す公開データは、大澤研究室のある東京都文京区にはない。そこで文京区役所と都庁に学生が直接出向き、ワークショップの上記の結論を説明した。出向いたのが教授ではなく学生だったにも関わらず、結果として、提供の難しかった街頭所在データの提供を受けることができた。
これでバスのルートのどの辺りが明るく、どの辺りが暗いのかということをより正確に可視化することに成功した。しかもこの結果は、歩行者にとって安全な歩行経路を得るために役立つという評価実験の結果も得られた。これで、時間通りにスムーズに運行するバス運行ルートの実現という目的に向かっての対処方法も見えてくる。「もともとあったデータジャケットを組み合わせるだけではなく、もっと新たなデータを参加者が提案し、実際に新しいデータの入手と可視化結果の提供に達した事例です。重要なのは、このように入所困難であったデータを入手するための利用目的を明確に打ち出すこと。その後の分析や可視化は至ってシンプルで、高度な人工知能が出る幕など滅多にない」と、大澤教授は言う。同教授の博士論文は、データを説明する人工知能の高速自動推論を扱ったものだった。本来人工知能を専門としてきた研究者が、人工知能より人間の役割の重要性を指摘しているわけだ。
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