コラム

日本メディアが報じない中国の黒人差別

2020年06月25日(木)11時50分

中国政府の黒人対応は多面的だ。山東大学は昨年、黒人留学生に中国人女性3人の「学伴(学習パートナー)」を付けるよう奨励した。「将来を見据えた人的投資になる」と、大学当局は女子学生を説得していた。アフリカからの留学生は、帰国した暁に中国人夫人を同伴し、政財界で出世すれば、「中国の婿」として中国との関係強化に貢献できる。

かつて漢王朝は匈奴に、唐王朝はチベットの王に皇帝の娘を「和親政策」として嫁がせていた。遊牧民の軍事力に屈服した後の屈辱的な生き残りの戦略で、この時の関係も現代中国の領土拡張の根拠の1つとされている。いわく、「匈奴も吐蕃(チベット)も中国の婿」だからだ。差別されている黒人たちが「中国の婿」になれば、いつしかアフリカも「中国の核心的利益」の一部とされるかもしれない。

日本メディアは果たして、こうした中国共産党の対黒人政策の本音を見抜いているのだろうか。

<本誌2020年6月30日号掲載>

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2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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