コラム

神仏をも恐れぬ中国の監視と弾圧、ビッグデータをフル活用

2018年07月28日(土)14時10分

現代の「ホロコースト」

ウイグル人人口1000万人のうち実にその1割が中国の強制収容所に入れられているというのが事実なら、ナチスドイツと比肩できるほどの「成果」だ。

再教育センターではウイグル人たちが相次いで死んでいるが、当局は「心臓発作」として処理。国外に亡命しているウイグル人団体は、現代のホロコースト(大虐殺)だと批判している。

ウイグル人だけが中国政府のターゲットではない。新疆ウイグル自治区に複数あるモンゴル族自治州と自治県では昨年秋から小中高の全科目でモンゴル語による教育が禁止。授業は完全に中国語で行われ、同化が一気に進んでいる。ウイグル人と言語が近いカザフ人に対する弾圧も強まってきた。携帯にイスラム教の聖典コーランのアプリがあったり、隣国のカザフスタンの同胞と交流したりしただけで逮捕監禁されている。

イスラム教徒を迫害する中国に対して、サウジアラビアやイランといったイスラム教大国は沈黙を守ったままだ。中国マネーがもたらした利潤にむしばまれ、同胞が圧政に苦しんでいるのを見て見ぬふりをする。

だが中国政府が得た膨大なイスラム教徒のビッグデータが国内監視にとどまるとは限らない。これを利用した監視網やサイバー攻撃がイスラム教国に向けられたときには手遅れだ。

<本誌2018年7月31日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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