コラム

日本のサイバー能力は北朝鮮、韓国より下...米国に続く2位は?(ハーバード大シンクタンク)

2022年10月15日(土)19時13分
サイバーインデックス

スパイチャンネル 〜山田敏弘〜/YouTube

<ハーバード大学内部のシンクタンクが発表した世界のサイバーインデックス最新版によれば、韓国やベトナムが急上昇している>

大学系シンクタンクとして世界でも最も影響力があると言われるハーバード大学ケネディ公共政策大学院ベルファーセンターが9月に、世界のサイバーインデックスの最新版を発表した。

国家サイバーパワー指数」という53ページの報告書で、30カ国のサイバーパワーをランキングにしている。ベルファーセンターの発表しているランキングということで、世界的にも注目度は高く、メディアでもいろいろと取り上げられている。おそらく世界中(特にランキングの高い国々)の専門家などがこのランキングを紹介することになるだろう。

例えば、ワシントン・ポスト紙は、「2020年に最初に発表されたパワー指数が再び公開された。ランキングのトップはアメリカ、2位は中国で、前回と変わっていない」と報じている。

さらにこう書いている。「ロシアは3位に入り、イランやウクライナ、ベトナム、韓国といった国がチャートを急上昇している」

このランキングは、サイバー防衛力と攻撃力も含めた評価によって決められている。8つのカテゴリーで評価され、サイバー攻撃による情報活動から、敵国を攻撃してダメージを与えることができる能力までが評価されているという。国家として、サイバー攻撃を活用する意思があるかどうかも見られているらしい。

30カ国中で16位の日本の評価は正しい?

そういう意味で言えば、調査対象の30カ国の一つに含まれる日本は、ランキング外になってしまうだろう。敵国を自発的に攻撃するサイバー攻撃能力もないし、その意思を保つことも許されていないからだ。

ただそれでもどういうわけか、日本もランキングに入っている。順位は30カ国中16位である。どのように調査が行われたのかはわからないが、日本からハーバード大学が抱えるいくつもの研究所に短期で留学している人たちも少なくないので、そういう人たちの協力を得た可能性もある。

このランキング自体の信頼性には限界があるというのは、報告書が自ら認めている。

同報告書によれば、「国家サイバーパワー指数は限界がある」とし、すべての必要なデータにアクセスできず、北朝鮮やイランなどはかなりの推測が入っていると書いている。特に、北朝鮮についてはほぼ全ての評価カテゴリーが「推測」ということになっている。それでも14位に付けており、日本よりもサイバー能力は高いことになる。

「国家サイバーパワー指数」やベルファーセンターなどについては、「スパイチャンネル〜山田敏弘」でも詳しく説明しているので、ぜひそちらをご覧いただきたい。

プロフィール

山田敏弘

国際情勢アナリスト、国際ジャーナリスト、日本大学客員研究員。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版、MIT(マサチューセッツ工科大学)フルブライトフェローを経てフリーに。クーリエ・ジャポンITメディア・ビジネスオンライン、ニューズウィーク日本版、Forbes JAPANなどのサイトでコラム連載中。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』、『CIAスパイ養成官』、『サイバー戦争の今』、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』、『死体格差 異状死17万人の衝撃』。最新刊は『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』。
twitter.com/yamadajour
YouTube「スパイチャンネル」
筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story