コラム

会議音声「漏洩」で確定──TikTokによる「個人情報」収集と「思想」操作の実態

2022年09月29日(木)18時50分
TikTok

5./15 WEST-iStock

<子供や若者を中心に大人気の中国系「動画投稿アプリ」TikTokは本当に危険?ユーザーに知らせずに行っているヤバい中身が明らかに>

中国系の動画投稿アプリであるTikTok(ティックトック)。ユーザー数は世界で10億人を超え、大人気アプリとなっている。

ティックトックは、中国のIT大手バイトダンス(字節跳動)が運営していることから、アメリカなどから危険なアプリだとしてたびたび批判されてきた。そして最近になってもまた、その安全性が次々と話題になっている。

結局のところ、ティックトックは「危ない」アプリなのか?

そもそもティックトックの安全性が大きく取り沙汰されたのは、トランプ前政権が米国内でティックトックを禁止しようとしたからだった。実際には、それより前から個人情報やデータが中国側に抜かれてしまう懸念は出ており、2019年には13歳以下の利用者の名前や写真、位置情報などの情報を集めていたとして、米連邦取引委員会から570万ドルの罰金を課されたこともある。

トランプの動きによって、当時アメリカ人ユーザーのデータを守るためにティックトックを米企業に買収させる提案が出た。今年6月にティックトック側は、アメリカ人のデータは米IT大手オラクルのクラウドに移行するとしている。あくまで、アメリカ人のデータだが。

ところが、その直後の6月20日に、ティックトック内部の会議の音声80本が漏洩し、暴露された。それら音声によると、中国国内にいるエンジニアがティックトックのデータに自由にアクセスできることが明らかになっており、物議になっている。

コンテンツには共産党の意向が反映される

またティックトックのコンテンツが、中国共産党の意向に影響されているのではないかという疑惑もある。ティックトックは2019年に、政治的なメッセージの広告を禁止にしている。さらに9月21日には、今年11月に行われるアメリカの中間選挙を前に政治的な投稿そのものを禁止すると発表した。

2016年の米大統領選でロシアのスパイ組織などがSNSを悪用して選挙介入した事実を鑑みると、テックトックの発表は評価されるべきだろう。ただその一方で、ティックトックのコンテンツが中国共産党の思惑に沿うような形でコントロールされているという疑念も出ている。

プロフィール

山田敏弘

国際情勢アナリスト、国際ジャーナリスト、日本大学客員研究員。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版、MIT(マサチューセッツ工科大学)フルブライトフェローを経てフリーに。クーリエ・ジャポンITメディア・ビジネスオンライン、ニューズウィーク日本版、Forbes JAPANなどのサイトでコラム連載中。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』、『CIAスパイ養成官』、『サイバー戦争の今』、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』、『死体格差 異状死17万人の衝撃』。最新刊は『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』。
twitter.com/yamadajour
YouTube「スパイチャンネル」
筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、国防長官に「全幅の信頼」と報道官 親族

ビジネス

米CB景気先行指数、3月は0.7%低下 関税巡る不

ワールド

プーチン氏「和平構想に前向き」、復活祭停戦後の戦闘

ビジネス

トランプ氏、早期利下げ再要求 米経済減速の可能性と
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 2
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 3
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ページを隠す「金箔の装飾」の意外な意味とは?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 9
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 10
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story