ベトナムと日本人
日本のアニメ・コミックはベトナムでどのくらい人気があるのか?
ベトナムの首都ハノイで小中高生、大学生、技能実習生に日本語を教えています。年齢は11才から30才ぐらいのベトナム人です。大学生・技能実習生は地方出身者が多いですが、小中高生は首都ハノイ生まれのハノイっ子ですから、都会っ子です。教えた生徒数は、2017年から数えてだいたい2000人ぐらいです。そんな私の交流した経験から、ベトナム人はどのくらいアニメ・コミックが好きか?について世代別に考えてみました。
小学生
アニメ・コミックファンの大半がこの世代と思います。ドラえもん、名探偵コナンはベトナムのほとんどの若者が小学生の時に好きになり夢中になって読んでいます。小学生にドラえもんと名探偵コナンの浸透具合は日本と同じくらい強いです。例えば、ドラえもんで言うと、ドラえもんに出てくるキャラクター達、ドラえもん、のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫(ベトナムではセコ)、ジャイ子、出木杉、ドラミなどの名前を言えば、「そうそう! いるいる!」とドラえもんのあるある話でベトナム人の若者と盛り上がる事が出来ます。コミックは公式にベトナムの出版社からベトナム語に翻訳されて販売されています。ワンピース、NARUTO、クレヨンしんちゃん、ちびまる子ちゃんなどを読んでいる小学生も多いです。
書店でコミックを立ち読みする小学生。座り込んで読んでいたりと、ひと昔(ふた昔?)前の日本の書店を思い出します (筆者撮影)
また、最近は鬼滅の刃、呪術廻戦、JOJOの奇妙な冒険、ワンパンマンなどが人気です。これらはアニメをNetflixを通じて見ています。ベトナムではスマートTVが普及していて、ネットTVに加入してお茶の間に設置しているスマートTVで観ています。ネットTVチャンネルのパックにNetflixが入っているので、公式にベトナム語字幕の日本アニメを見ている子供たちが本当に増えています(しかしまだネット上にはベトナム語字幕付きの違法ダウンロード版もあるようですが。。。)。
中学生
イラストを描くのが好きな中学生 (著者撮影)
かわいいイラスト。 鬼滅の刃の禰豆子もいます。 (筆者撮影)
思春期に突入するので半数はドラえもん・名探偵コナンなどが好きですが、勉強以外の楽しい時間はKpopや洋楽など、小学生の時は興味が無かった音楽などに興味が向きます。ファッションやスポーツに傾倒していく学生もいます。しかし、今までよりマニアックにアニメやコミックにのめり込んでいく学生も一定数いて、アニメ・コミックやオリジナルのキャラクターのイラストを描いたり、コスプレを始めたりします。日本のYouTuberの歌い手を好んで聞いたり、J-popを聞いたりしています。
今年の後半からは鬼滅の刃がベトナムでもマニアックな層を中心に人気が広がって行きました。映画版の上映がベトナムでもありましたが、劇場にまで足を運ぶ学生はまだ少ないですね。私が鬼滅の刃劇場版を観に行った時に劇場に置いてあったパンフレットをちょっと多くもらい、生徒達にプレゼントとしてクラスへ持っていくと、取り合いになり大変でした。鬼滅の刃人気は相当ありますよ。しかし絶対数としてはまだドラえもんやコナンの映画を見に行く小中学生の方が多いですよ。
鬼滅の刃映画版のチラシ 生徒達にプレゼントしたら大好評で奪い合いになってしまい、じゃんけんで買った生徒にあげる事に (筆者撮影)
学校の休み時間JOJOになりきる中学生 (筆者撮影)
高校生
ときどき休憩時間に名探偵コナン等のコミックを読んでいる生徒を見かけますが、高校生の大半はもうアニメは卒業でしょう。マーベルやDC映画などのハリウッド映画や洋楽・K-popにダンス、スポーツやファッションに夢中になっていきます。しかし、中学生時代にマニアックなアニメ・コミックファンになった学生のほとんどは高校になってもファンをやめません。高校生になっても日本語の勉強を続ける生徒に、この層の学生は多いです。
大学生
この年頃になると、「ドラえもんは小さいときに良く読んだなぁ」となってきます。しかし名探偵コナンなどのコミックを読む学生は少しいます。しかし、中学・高校とマニアックになっていった学生が大学生になると、オタクの領域に入っていきます。またJ-pop,日本の実写映画、日本の俳優・女優について調べる学生も現れます。日本へ留学する学生ももちろんいます。そしてコスフプレイベントやファンミーティングに参加したり学校を超えてアニメ・コミックのコミュニティを作っていきます。様々なファンミ―ティングがあり、私は2017年に銀魂のファンミーティングに行って、銀魂のベトナム語訳をした方と話す事が出来ました。
(筆者撮影)
(筆者撮影)
東京喰種トーキョーグールの金木のコスプレ (筆者撮影)
社会人
社会人になるとほとんどのベトナム人はアニメ・コミックを全く読みません。アニメ・コミックは「子供時代の楽しみ」だからです。
「ドラえもんやワンピースは昔よく観たなぁ、読んだなぁ」といった感じです。日本の様に大人向けのコミックが全くないので、ベトナム人がコミックを読むことはありません。アニメを観る時は子供に見せている時でしょう。しかし、社会人になってもオタクを止めないベトナム人が増えている事も事実です。しかし大人になると日本のアニメだけではなくマーベルやDCコミックの映画やコミックにも傾倒したり、日本のアニメ・コミックオタクから日本の文化全般に興味を持つベトナム人も現れてきます。30代後半や40代のべトナム人はアニメ・コミックを見た経験もほとんどありません。この世代は「おしん」世代です。おしんはベトナムで1990年半ばに国営放送局VTVで放映され大ブームを起こしました。ドラえもんなどは知っていますが、彼らの子供が読んでいたから知っているといった所です。
まとめ
ベトナムの日本のアニメ・コミックの人気は10代のベトナム人が支えていると言っても過言ではありません。社会人になってもアニメ・コミックを見るベトナム人もいますが、かなり少数派です。ベトナムでは大人になると「子供っぽいから」日本のアニメ・コミックをほとんど見ないからです。しかし、JICAの資料によると、2034年にはベトナムも高齢化社会になるそうです。そこで、今の十代が社会人になっても読みたくなるような「大人っぽい」コミック・アニメをどんどんベトナムでも出版・配信したらどうでしょうか?今後は日本のアニメ・コミックをNetflixでベトナム語字幕版などでたくさん配信して欲しいです。アニメ・コミック好きの先生としては、生徒達が社会人になっても日本のコンテンツの話で楽しい会話が出来たらこの上ない幸せです。
著者プロフィール
- ヨシヒロミウラ
ベトナムハノイ市在住。北海道江別市出身。武蔵大学経済学部経営学科卒業。2017年に国際交流基金日本語パートナーズとしてハノイに派遣。ベトナムの人々と社会に魅了されベトナム定住。現在進行形のベトナム事情を執筆。ベトナム情報ブログ「ベトナムの日本人」と北海道江別市の情報サイト「江別市民ニュース」も運営。ベトナムハノイ市の日本食ネットスーパー「アクルヒハノイネットスーパー」応援係。えべつ観光特使として北海道江別市の納豆をベトナムへ輸出コーディネイト。ベトナムと日本・北海道を繋げる。ツイッター @yoshihiro_x