最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
『新レトロ×アップサイクル』が描く持続可能な価値。ポートランドで再発見する『手書き文化の魅力』
| 物語を求めるZ世代の感性
今、世界中で流れるレトロブーム。
オンラインでのコミュニケーションが主流となった現代。そんな中、手書きのカードや手紙が新たな注目を集めています。
特にZ世代の若者たちにとって、手書きのカードは『わたしらしさ』を表現し、創造性を楽しむためのクリエイティブな試みとして位置づけられているのです。
自分の好きなデザインのカードをリアル店舗で選ぶ。そして、普段ではなかなか言えない一言を心を込めてカードに書き、封筒に宛名を手書きし、切手を貼ってポストに投函する。その一連のプロセス自体が『新たな体験』として注目されています。
Z世代がストーリーを重視する背景には、デジタル時代に育った彼らならではの価値観が影響していると言えるでしょう。
日々膨大な情報に囲まれる現代の生活。そんな中で、Z世代は、自分の心に響く特別なストーリー(物語性)を「my things(自分だけのモノやコト)」として捉える傾向があります。
さらに、環境問題や社会的責任への意識の高まりも、手作りやオリジナル性に価値を見出す理由の一つとして挙げられます。
その中で、多くの顧客が特に魅了されているのが日本の文具製品です。たとえば、滑らかな書き心地の万年筆、それに調和する質感豊かな紙、そして使い勝手を追求した手帳の設計。さらには、着物をアップサイクルして作られた絹のペンケースなど。「使う喜び」を提供するこれらの製品は、今の時代においてますます求められる存在となっています。
「日本が本来持つ美意識は、消費者にとって新鮮で魅力的なものです。特に日本のデザインは、実用性を兼ね備え、美しい文化の窓口として世界中の人々を魅了し続けています。」そうジェニファーさんは静かに微笑みます。
| クリスマスに灯る、一人ひとりの小さな輝き
「クリスマスは、どんな人にとっても特別な時間であってほしい。」
そう語るジェニファーさんのクリスマスツリーには、彼女らしい遊び心とエシカルな視点がいっぱい。
「たとえば、食べ終わったオレンジの皮を乾燥させて作るオーナメントや、使用済みのティーバッグを蜜蝋に浸して仕上げたキャンドルティーバッグなど。こうした工夫を楽しみながらツリーを彩っているんですよ。」
ジェニファーさんのライフスタイルの基本には、過去の長期フランス滞在と生まれ故郷であるオレゴン郊外での生活の影響が息づいていると語ってくれました。
「パリの蚤の市で目にした古い家具、代々引き継がれてきた製品、捨てる前にまずは転用を考える生活の知恵。
オレゴンの自然と共にする落ち着いた暮らし。木々の香り、オーガニックの植物や手作りの製品。」
特別な美しさは、日常の中にそっと息づいています。それを見つけた瞬間、日々が静かに輝き始めるのです。
日常に潜む美しさに気づくこと。それは、あなたが望む豊かな暮らしへの小さな扉を開く鍵なのかもしれません。
美しいものは特別な場所ではなく、日々の中にそっと息づいている――そんな想いが静かに伝わってきます。
年末の慌ただしい時期だからこそ、社食のナプキンに心を込めた短い一言を添えるだけで、それがどんなに小さな言葉でも、季節の温もりを運ぶエシカルギフトになるのかもしれません。
2025年最初の記事は、特別企画として【2025年ポートランドとオレゴンの『教育』】をテーマにお届けします。
日本でも問題視されている、詰込み型教育の見直しや、家庭の貧困が生む教育格差といった課題について、ポートランドの学校の取り組み。特別インタビューを通じて、最新のDEI(多様性・公平性・包摂性)の視点から深掘りし、教育の未来へのヒントをお伝えします。 2024年1月末に掲載予定です!
ポートランド、オレゴンのありのままの姿や、そこでの生き方考え方を通じて、皆さまの日々に新たな視点や気づきをお届けできていれば幸いです。
来年も引き続きお楽しみいただける内容をお届けしてまいりますので、変わらぬご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)