日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
「ジャンクフード法」成立か?国民の半分がぽっちゃりの国コロンビア
今コロンビアはこれまでにないほどの大きな規模のデモが連日行われており、ニュースもデモ関連の話題で持ちきりになっています。
ネガティブなニュースが続いてばかりなので今回は少しボジティブな話題をピックアップしたいと思います。
『ジャンクフード法』制定秒読み
5月20日上院の第七委員会は、健康に悪影響を及ぼす加工食品に表示を義務付ける「ジャンクフード法」が第3審議を通過した事を発表しました。
これから行われる本会議で可決され、大統領の署名を受ければ正式に法律化することとなります。
ジャンクフード法は過剰な糖分、塩分、脂肪分が含まれる加工食品のパッケージの前面にラベルを貼る事を義務付ける法律で、子供を中心とした国民の肥満防止と健康増進を目的としています。
「このパンデミック渦中では、特に子供たちの健康的な食生活の実践を促進するケアが今まで以上に重要になってきます。不健康な食生活は健康に影響を与えるだけでなく、一般的に経済や社会にも悪影響を及ぼすのです。」この法案を率いたメンバーの一人であるナディア・ブレル上院議員はそう語ります。
さらにこの法案の発案者であるマウリシオ・トロ議員は「我々はこの法案によって国民が自分の健康を管理するための正直でシンプルな情報を得ることを保証し、過剰に塩分、糖分、脂肪分、甘味料が含まれた製品ではない消費の選択ができるようになります。」と発言しました。
コロンビアの高い肥満率
コロンビアの肥満率は高く、18歳から64歳の56%が肥満か過体重と言われており、実に5人に1人が肥満だと言う調査結果が出ています。
未成年(5歳から19歳)は30%が肥満か過体重と言われており、こちらは日本の成人男性の肥満率と同じくらいの割合ということでした。
肥満率が高いと言いながらもコロンビアは割と見た目を気にする国民性でもあるので、他のラテンアメリカの国と比べるとびっくりするくらい肥満の人はそこまで見かけません。しかし、男女問わずお腹が出ている人はとても多く、その理由はコロンビア人の食生活をよく観察しているとよく分かるような気がします。
私がこちらに来たばかりの時に感じた事のうちの一つが「食べ物が茶色か黄色ばっかり」という事です。
揚げ物や肉がとにかく多く、こんな料理ばかりじゃ太ってしまうなと思っていたのですが、あまりの油の多さに太る前に胃を悪くして逆に痩せてしまった程。コロンビアに来た日本人バックパッカーが「コロンビアの人は歩きながら常に何か食べてる」と言っていたのがとても印象的でした。
富裕層エリアを除いてコロンビアの街中には至るところにパン屋さんがあり、簡単に小腹を満たすことができます。
日本のような惣菜パンはなく、中にクリームが入っているものや、砂糖やチーズがたくさん使われているものばかりで、こちらの人はそれらを砂糖をたっぷり入れたコーヒーと一緒に楽しみます。
また、こういった食生活は子供の頃から始まります。
学校によりますが、コロンビアの小学校は朝7時から午後2時まで。給食はなく、その代わりに11時ごろに軽食の時間が設けられます。
軽食は持参する子供もいますし、校内の売店で購入することも可能です。私の夫の家庭は健康意識が高いので、彼が子供の頃はサンドイッチとミキサーで作ったジュースを持参していたそうですが、売店で毎日購入する子供も多く、そこで売られているのはコカコーラをはじめとした炭酸飲料と先ほど載せた写真のような菓子パン類。コロンビアの公立学校では日本ほど食育に力を入れていないので、子供たちはなんの疑いもなくこう言ったものを日常に摂取しながら大人になっていくわけです。
近年では富裕層を中心に健康に対する意識が高まっており、オーガニックスーパーや健康食品を取り扱う店を多く見かけるようになりました。
コロナウイルスで肥満や糖尿病患者は重篤化しやすいということから、コロナウイルスによる致死率が高いコロンビアではこれを機に国民の食生活の改善が重要課題になってくることでしょう。
したがって、今回のような「ジャンクフード法」のような食に関する取り組みが今後どんどん進んでいくことが予測されます。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon