魅惑の摩天楼、香港フォト通信
香港の2021年のキーパーソンは、いるけれどいないことにされている
香港は旧正月を祝うため、カレンダー上は年は明けていてもまだ新しい年を迎えていない。
今年の旧正月の元旦は2月12日である。今はまだ2020年であって、2021年の夜明けはもうすぐ。
2019年、2020年と話題にのぼり、そして2021年もその動向が海外から注目される香港のキーパソンと言ったら、おそらく "デモクラティック・フィギュア"かもしれない。あくまで海外からの見方である。
WORLD VOICEのテーマである今年のキーパーソンとその取り組みという主旨からは大幅にずれてしまうけれど、キーパーソン絡みでちょっと違う話題を書いてみようと思う。
■香港電台による2020年度の キーパーソン投票
年末に香港の公共放送局の香港電台(RTHK)が2020年度のキーパーソン、2020年に香港で最も活躍した人を選ぶオンライン投票を主催した。
これはあらかじめRTHKが候補10人を選び、ネットで視聴者が投票して後に結果を発表するというもの。
どんな人が候補に上がったのか、主だった6人をざっとピックアップしてみよう。
▼香港政府・衛生防護センターのチャン所長
日本では全く知名度は無いけれど、今の香港の顔。
コロナ禍の現状の会見で出てくるのはいつも決まってこの方。
テレビでこの方の顔を見ない日はない。
懸命にコロナ制御に取り組んで、会見で政府のコロナの取り組みを説明してくれる女性。
チャン所長は去年ご主人を脳腫瘍で失くしているにもかかわらず、喪があけるやいなや復帰し気丈にもほぼ毎日会見をこなしている姿は胸をうつものがある。
▼キャリー・ラム香港行政長官
ご存知、香港特別行政区の長。去年米国から制裁を受け、口座を凍結され、自宅に現金を山積みにして生活していると告白。あらららら。
▼香港の街を綺麗にしているクリーナーたち
2019年、抗議活動の制圧に使用された催涙弾の後片付けをし、そして去年からはゴミ箱の中のマスクの後片付けをしているのはこの方たち。特別な手袋も支給されず低賃金で働いている方たち。頭が下がる思いだ。
▼医療従事者たち
コロナの中、最前線に立って患者を救ったのはこの方たち。自らも感染するかもしれないという恐怖と戦いながら最善を尽くしてくれている。同じく頭が下がる思いである。
▼アップルデイリー(新聞)
アップルデイリーとは蘋果(りんご)日報とも呼ばれる香港のタブロイド紙。反中、民主寄りを堂々と掲げる香港で唯一のメディア。創業者ジミー・ライは海外と結託して国家転覆をはかった疑いで逮捕され、一時保釈されたものの取り消され再び収監されている。
▼RTHKキャスター、ナベラ・コザー
香港初の非中国系の広東語キャスター。抗議活動の際に中央政府側に歯に衣着せぬ辛らつな質問をした事が賛否両論となって批判の渦中にある。
■2020年キーパーソンの投票結果は?
そしてオンライン投票の結果は今年1月4日に発表される予定であった。
しかし「投票に問題が生じたためにRTHKは投票自体を中止する結論に至りました」と発表。
たかがキーパーソンを選ぶのがこんな大事になっちゃうんだね、今の香港は。
悲しいことだけれど最初からデモクラティック・フィギュアを候補から外していれば良かったのではないだろうか。
(RTHK:キーパーソン2020中止のお知らせ)
ちなみに投票キャンセルの後、1月22日RTHK(香港電台)上層部はナベル・コザーキャスターとの契約更新を解消したと発表。
来年も続くであろう香港のコロナ禍の中で、香港で異論の余地を挟まないキーパーソンは医療従事者とクリーナーとチャン所長なのかもしれない。
著者プロフィール
- マリエ
香港在住の雑貨が大好きなフォトグラファー。大学卒業後、自動車会社、政府機関、外資企業にて広報担当。夫の転勤で香港に移住後、カメラに興味を持ち、日本人、外国人フォトグラファーに師事。現在、雑貨を可愛く撮るカメラ教室「Zakka Styling」を主宰。同時に家族写真、ロケーションフォトの依頼もこなす日々。インスタグラムはこちら。