ダイバーシティ先進国ベルギーから観る欧州 LGBTQI 事情
「ポスト・メルケル」ドイツの次期リーダー候補者たち
主な首相候補の顔ぶれ
公共放送ZDFの最新の世論調査によると、首相に相応しいと思う政治家として名前が上がっているのは、バイエルン州首相で、南部バイエルン州の地域姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU、現有46議席)のマルクス・ゼーダー党首。コロナ対策で制限強化や検査拡大などで議論をリードし指導力を発揮、2位以下を大きく引き離して首位に立っている。2位には社会民主党(SPD)出身の副首相、兼財務相オラフ・ショルツが続いている。政権ナンバー2としてショルツ自身の人気はあるものの、問題は所属政党・社民党(152議席)の支持の低さ。現在第2党ながら最新の政党支持率ではCDU/CSU連合(CDU200議席/CSU46議席、計246議席)の半分未満。コロナ対策で回復基調のCDU37%に対して、SPDは支持を落とし続けて15%と大きく水を開けられている。更には、現有67議席で第7党ながら近年人気の高い環境政党・同盟90/緑の党が支持率20%とCDUに続く2番目に高い数字でSPDを上回っており、SPDが首相を狙える立場には到底ないし、連立の相手としても袖にされそうな状況だ。その首位独走のゼーダーとラシェットとの首相候補比較でも、38%対32%とゼーダー有利となっていて、ラシェットにとっては分が悪い数字が出ている(他の候補20%、分からない10%)。
ただ、ここで留意しなければいけないのは、ゼーダーがバイエルン州だけを地盤とした地域姉妹政党CSU出身と言うことだ。CSUはバイエルン州以外の州では活動せず、逆にCDUもバイエルン州では活動せずという相互不可侵の関係で、両者が競合することはなく、言わばCSUはCDUの「バイエルン州支部」のような位置付けになっている。ドイツ連邦全16州のただ一つの州のCSUの党代表が、全国政党CDUの全面的な支持を取り付けて、CDU/CSUの統一首相候補となり得るかどうか。過去には2002年、当時野党だったCDU/CSUは、CSUのシュトイバー党首を担いで選挙に臨んだが、僅差で敗れた歴史もあり。そして、当のゼーダー本人もバイエルン州首相の立場に留まることを希望していて、首相の座は目指していないとも伝えられる。
他にも首相候補と囁かれている人物として、目下メルケル首相と共にワクチン接種、確保などコロナ対策で忙しいイェンス・シュパーン保健相の名前が上げられよう。実はこの彼こそが筆者が密かに注目しているダークホース。昨年はコロナ対策で一気に名を上げた人物だが、現メルケル政権で最年少大臣(40歳、就任時37歳)にして、同性愛者として初めて世界の主要国ドイツの首相になり得る可能性を秘めている。その可能性については、彼のプロフィール、過去の同性愛者の政治家の紹介も含めて続編としてお伝えしたい。同性愛者の首相候補という側面から焦点を当てつつも、さまざまな角度から再度他の候補者を交えて「ポスト・メルケル」レースを俯瞰し、検証したいと思っている。
著者プロフィール
- ひきりん
ブリュッセル在住ライター。1997年ドイツに渡り海外生活スタート、女性との同棲生活中にゲイであることを自覚、カミングアウトの末に3年間の関係にピリオドを打つ。一旦帰国するも10ヶ月足らずでベルギーへ。2011年に現在の相方と出逢い、15年シビル・ユニオンを経て、18年に同性婚し夫夫(ふうふ)生活を営み中。
ブログ:ヨーロッパ発 日欧ミドルGAYカップルのツレ連れ日記
Twitter:@hiquirin