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サイバー空間の治安・安全保障というビックテックの公共性を再評価すべきだ
サイバー・セキュリティ上の問題が発生する
上述の中間報告書が述べているような規制措置がビックテックに適用された場合、サイバー・セキュリティ上の社会問題が発生することは避けられないだろう。
たとえば、スマホに対して公式ストア以外からのアプリのダウンロード環境を整備することを義務付ける規制(サイドローディング)は無意味かつ有害だ。ビックテックによる審査を経ずにユーザーの手に届くアプリの信頼性は極めて低い。そのため、多くのユーザーがマルウェア入りのアプリを掴まされる可能性がある。政府がこのような仕様を実装することをビックテックに強要すれば、日本のように高齢化が進んだ社会では、多くの高齢者が詐欺等の犯罪行為の犠牲になることは明らかだ。「STOP詐欺!不必要なアプリのダウンロードはやめましょう」という高齢者向けのポスターが公的機関に掲示される未来が目に浮かぶ。
また、ネット環境に一定程度手慣れた利用者であっても、ウェブアプリを利用した犯罪行為を防ぐことは至難だ。ウェブアプリは、ダウンロード行為が必要なく、ウェブサーバーに設置されたアプリをスマホのブラウザで閲覧・利用するだけで被害が発生する。
そのため、ブラウザのOS機能へのアクセスやブラウザエンジンの自由化をビックテックに強いることの潜在的なリスクは極めて高い。若者が多く利用するウェブアプリなどに突然何らかの意図に基づくマルウェアが挿入された場合、ビックテックは法律に縛られて適切な対応ができず壊滅的な事態を引き起こす可能性すらある。
世界の犯罪の舞台はリアルな空間からサイバー空間に移っており、国家同士の戦闘行為においても様々なマルウェアが多用されるようになっている。ビックテックが提供する相対的に安全なサービス以外を利用するリスクについて、日本においては十分に周知がなされていない。
デジタル分野の競争政策に安全保障の視点を
欧米におけるビックテック叩きは反資本主義イデオロギーに基づく動きが背景にある。そのため、メリットとリスクを議論する冷静な議論は行うことは難しい。反資本主義イデオロギーを妄信した人々にとってビックテックは悪の象徴そのものだからだ。
日本ではビックテックは反資本主義イデオロギーによる激しいバッシングを受けていない。日本における誤った競争政策の議論は、安全保障に対する無知、欧米に対する舶来信仰による思考停止の産物に過ぎない。
したがって、欧米のビックテック叩きの猿真似をするのではなく、日本政府はその政策が本当に必要なのかを再検討することができる。デジタル分野の競争政策に関して更に議論を深めていくプロセスにおいて、今後は必ず安全保障分野の有識者を専門家として加えることが必要だ。
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