コラム

トランプ大統領の選対本部長変更は吉と出るか・凶と出るか

2020年07月30日(木)17時30分

ステピエン氏の新戦略のもと、仕切り直しが進んでいく

ステピエン氏の能力は緻密な有権者分析と的確なメッセージ作成能力にあると言われている。実際、彼が選対本部長になって以来、トランプ陣営からメディア向けの世論調査分析等に関する情報発信が増えている。

ステピエン氏が最も注目している数字は、接戦各州における共和党支持者の有権者登録数と民主党支持者の有権者登録数の推移であり、幾つかの州では共和党が優勢であるというデータだ。米国では自党の支持者をしっかりと選挙に動員することができれば、ギリギリの接戦となる大統領選挙では勝利を手にすることはできる。

この見解は前回2016年大統領選挙ではヒラリーはサンダース支持者や有色人種層を動員できなかったために敗北していることからも正しいものだと言える。したがって、同氏が主張する通り、単純な世論調査結果だけでは意味がなく、有権者登録数と支持者のロイヤルティの双方が重要であることは確かだ。

また、ステピエン氏は実質的にバトルグラウンドを変えるという発想も述べている。同氏の見解によると、2016年のようにラストベルトで地滑り的な勝利をできなかったとしても、ネバダ、ニューハンプシャー、メイン、アリゾナ、そしてミネソタなどの非ラストベルトの接戦州を制することで勝利を掴むことができる、としていることは興味深い。

これはバイデン陣営がラストベルトやサンベルトの一部(テキサスなど)に資源を振り向けていることの裏をかき、トランプ陣営は民主党側の対応が手薄になっているポイントを突いていくことを意味する。この方針転換は選挙戦の潮目を変える可能性があるものであり、今後の選挙地図を塗り替えていくことに繋がるかもしれない。

前任のパスケール氏はデジタル分野の責任者として選対には残るようであるが、今後はステピエン氏の新戦略の下でトランプ陣営全体の仕切り直しが進んでいくことになるだろう。強みのデジタル分野でも劣勢に立たされつつあるトランプ陣営において、敏腕選挙参謀は逆転のための風を吹かすことができるのか。大統領選挙の行方は彼の一挙手一投足にかかっていると言えるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税で実効税率17%に、製造業「広範に混乱

ワールド

「影の船団」に偽造保険証書発行、ノルウェー金融当局

ワールド

焦点:対日「相互関税」24%、EU超えに政府困惑 

ワールド

OPECプラス8カ国、カザフの超過生産巡り協議へ 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 9
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story