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ハリウッドの映像製作で本当のパワーを持ち始めた女性たち
最近はプロデューサーとして辣腕ぶりを発揮しているウィザースプーン Mario Anzuoni-REUTERS
<70年代アメリカのロックシーンを描いた小説『デイジー・ジョーンズ&ザ・シックス』の映像化に動いたのはいずれも有能な女性たちだった>
1970年代に誕生したイギリスのロックバンド「クイーン」と若くして世を去った伝説的なボーカリストのフレディ・マーキュリーを描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』は、全世界で大ヒットして、主演のラミ・マレックはアカデミー賞の主演男優賞を受賞した。
アルバム『オペラ座の夜』が発売された高校時代にレコードを買った私の世代にとっては懐かしさで胸が熱くなる映画だったが、生前のマーキュリーを知らない若い世代が熱狂したのは興味深かった。この感覚は、1970年代にティーンだった私たちの世代が、若い頃に「ジャズ時代」(あるいは「狂騒の20年代」)と呼ばれる1920年代を舞台にした『グレート・ギャツビー』に惹かれたのと似ているかもしれない。
それぞれの時代の特異な出来事は、小説や映画としてそれを体験していない世代にもノスタルジックな感情を伝えてくれる。F・スコット・フィッツジェラルドは同時代の作家としてジャズ時代を描いたわけだが、それを映画化したロバート・レッドフォード主演の名作『グレート・ギャツビー』は、ラミ・マレック主演の『ボヘミアン・ラプソディ』のように若い世代が体験していない時代の重要なエッセンスを伝えた名作だ。
「セックス、ドラッグ、ロックンロール」の1970代ロックシーンを描いたベストセラー作家 Taylor Jenkins Reidの新刊『Daisy Jones and The Six(デイジー・ジョーンズ&ザ・シックス)」』も、その時代特有のエッセンスを伝える作品のひとつだ。
この小説は、現在のノンフィクション作家が1970年代の架空のバンドについて書いた本という形式を取っている。1970年代にアルバム『オーロラ』で人気の頂点に達したロックバンド「デイジー・ジョーンズ&ザ・シックス」は、その全米ツアーの最中に突然解散した。この「作家」は、8年間にわたって生き残ったバンドのメンバーや家族を取材し、バンドの誕生から解散までの「真相」を追った。
ロサンゼルスの裕福で放任主義の両親に育てられたデイジー・ジョーンズは14歳から1人でクラブやロックシーンに出没し、そこで年上のロックミュージシャンとつきあったりするトップクラスのグルーピーだった。美しくて奔放なデイジーに恋する男は多かったが、彼女は誰の言いなりにもならない頑固さを持っていた。生まれつきの作詞の才能や独自な声を持つデイジーは、創作の意欲にかきたてられてシンガーソングライターになる。
一方、父が家族を捨てたために幼いときから母子家庭で育ったビリー・ダンは父が残したギターをきっかけに音楽にのめりこむようになり、弟のグレアムと「ダン・ブラザーズ」というバンドを結成していた。だが、メンバーが6人に増えたことから「ザ・シックス」と名前を変え、同じ頃にレコード・プロデューサーのテディ・プライスに見出されてデビューを果たした。
実力はあるがいまひとつ商業的なインパクトが少ない「ザ・シックス」は、ツアーの前座をしていたデイジーと試験的に一緒にアルバムを作ることになる。ゲスト的な存在としてレコード企画に招かれたデイジーは、同等の立場を要求し、ビリーと衝突する。その結果「全員が納得できない」という点で平等な「デイジー・ジョーンズ&ザ・シックス」というバンド名でアルバムを作ることが決まる。
これまでリーダーとして専制君主的にバンドを率いてきたビリーだが、デイジーの影響で誰もが意見や文句を言うようになり、バンド内の緊張が高まっていった。自分の音楽に過剰とも言える情熱と自信を持つカリスマであるビリーとデイジーは、自分たちも認めたくない愛と憎しみが混じり合った情熱にかられてアルバムを作っていく......という筋書きだ。
1970年代のロックを聴いていた人なら、「デイジー・ジョーンズ&ザ・シックス」を読みはじめてすぐに「フリートウッド・マック」を連想することだろう。デイジーはスティービー・ニックス、ビルはリンジー・バッキンガムだ。
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