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トランプ暴露本『Fear』が伝える本当の恐怖、もう日本も傍観者ではいられない
トランプ大統領の自己中心的な言動、精神の不安定さ、知識不足、忠誠心の欲求、ホワイトハウス側近同士の軋轢などはウルフとマニゴールトの本でも描かれていた。ウッドワードの『Fear』は、しっかりとした情報源をもとにそれを裏付けている。
この本には、次のような恐ろしい実態が克明に描かれている。
▼トランプは「恐怖」こそが最もパワフルな力であると信じている。
▼トランプは証拠があっても自分の嘘を認めないこと、決して謝らないことが「強さ」だと信じている。
▼トランプの経済などの知識は小学生なみ。だが、それを認めず、学ぶ意思はない。
▼トランプは専門家であるアドバイザーの意見は聞かず、根拠がない持論だけを信じる。
▼国防長官のマティスいわく「大統領は小学校5年生か6年生のように振る舞う......また、その程度の理解力だ」
▼ケリー首席補佐官いわく「(大統領は)ばかだ。何であれ彼を説得するのは無意味。脱線して怒鳴り散らすだけ。われわれがいるのは『クレイジー・タウン』だ」。
▼トランプは閣僚や補佐官などに自分への絶対的な忠誠心を誓わせるが、自分は彼らを簡単に裏切る。彼らが辞任する前にツイッターで解雇を告知し、相手に恥をかかせることで自分のパワーを誇示する。
▼トランプの人選とリーダーシップが、ホワイトハウスの内部に混沌状態を作りだしている。元首席補佐官プリーバスいわく「蛇とドブネズミ、ハヤブサとうさぎ、サメとアザラシを檻のない動物園に放り込んだら、じきに状況が悪化して血みどろになる。(ホワイトハウスで)起こっているのはそれだ」
▼トランプは病的な嘘つき。証拠が目の前にあっても平然と嘘をつく。経済担当大統領補佐官コーンいわく「彼はプロの嘘つき」。
▼トランプは弾劾を恐れている。
米韓自由貿易協定(KORUS)に関する冒頭のシーンを読むと、私たちが毎日危険な崖っぷちに立っていることがわかり、背筋が寒くなる。
1950年代から存在するKORUSは、経済面だけでなく、軍事協力や秘密情報機関の活動の点でアメリカにとって重要なものだ。2万8500人ものアメリカ軍人が韓国に駐屯するのは、韓国のためではなく、アメリカのためである。そんなことは、ふつうのアメリカ人でも知っている。
それなのに、トランプ大統領は韓国への貿易赤字が年180億ドル、米軍を韓国に駐屯させる費用が35億ドルもあることに怒り、協定を停止することを独断で決意した。
アメリカの国防にとってKORUSがいかに重要なのかを経済担当大統領補佐官コーンなどの側近が何度も説明したのだが、トランプは「そんなことはどうでもいい。その議論には飽き飽きだ! もう聞きたくない。KORUSからは撤退する」と韓国大統領に協定停止を告げる書簡を書くことを命じた。コーンと秘書官のポーターが行ったのは、書簡を完成させないことと、サインできないように隠すことだった。集中力がないトランプが忘れてくれることを願って。だが、トランプはしばらく忘れてくれるのだが、また思い出して同じことを命じる。
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